相続税の基礎知識

相続税の申告のしかた|必要書類・提出先・自分でできるかの判断

相続税の申告を、期限・提出先・必要書類・申告書の構成の順に解説します。税額がゼロでも申告が必要なケース、自分でやるか税理士に頼むかの判断基準、税理士報酬の相場、納付が難しいときの延納・物納までまとめました。

約6分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 相続税の申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。提出先は亡くなった人の住所地を管轄する税務署で、相続人が共同で1通提出するのが一般的です。
  • 配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使う場合は、税額がゼロでも申告が必要です。
  • 財産が預貯金中心で不動産も自宅1件、相続人も少ないなら自分でも申告できます。土地が複数ある、非上場株式がある、特例を使うといった場合は専門家に依頼したほうが有利になることが多いです。
  • 税理士報酬は、一般に遺産総額の0.5〜1%程度が目安とされています。
  • 延納と物納は、いずれも申告期限までに申請が必要です。払えないから後で相談、では間に合いません。

相続税の申告は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内。財産の調査、遺産分割、評価、申告書の作成を、この期間で終える必要があります。

この記事では、何をそろえ、誰がやるかをどう決めるかを整理します。

そもそも申告が必要か#

判定の起点は基礎控除です。

税額ゼロでも申告が必要なケース

ここが最も多い失敗です。次の特例は、申告することが適用の条件です。

「計算したらゼロだったから申告しない」と判断すると、特例が使えず、本来かからないはずの税金と加算税が生じるおそれがあります。基礎控除を超えているなら、必ず申告の要否を確認してください。

提出先と提出のしかた#

項目内容
提出先被相続人の死亡時の住所地を所轄する税務署(相続人の住所地ではありません)
提出者相続人・受遺者。共同で1通提出するのが一般的です
期限相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内
納付申告期限と同じ日まで。金銭一括が原則

相続人が別々に提出することもできますが、財産の評価がずれると税務署から確認が入ります。実務上は共同提出が通例です。

申告書の構成#

第1表から第15表まであります。すべてを使うわけではなく、財産の内容に応じて必要なものを作ります。

表内容
第1表課税価格・相続税額の計算(表紙にあたる)
第2表相続税の総額の計算
第5表配偶者の税額軽減
第9表生命保険金などの明細
第10表退職手当金などの明細
第11表相続税がかかる財産の明細
第11・11の2表の付表小規模宅地等の特例
第13表債務及び葬式費用の明細
第14表生前贈与加算・特定贈与財産
第15表相続財産の種類別価額表

作成の順番は、第9表・第11表・第13表などで財産と債務を集計してから、第1表・第2表で税額を計算する流れになります。

必要書類#

① 身分関係

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式(または法定相続情報一覧図)
  • 相続人全員の戸籍謄本・住民票
  • 相続人全員のマイナンバー確認書類と本人確認書類
  • 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書(または遺言書の写し)

② 財産

財産必要な資料
不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、公図、測量図、名寄帳、賃貸借契約書
預貯金残高証明書(死亡日時点)、既経過利息計算書、過去5年程度の取引履歴
有価証券残高証明書、取引報告書、配当金の通知
生命保険保険金の支払通知書、保険証券
退職金支払通知書
その他車検証、ゴルフ会員権、貸付金の契約書、貴金属・書画骨董の資料

③ 債務・葬式費用

  • 借入金の残高証明書、金銭消費貸借契約書
  • 未払いの医療費・公共料金の請求書
  • 未払いの固定資産税・住民税の通知
  • 葬儀費用の領収書(お布施は支払先と金額のメモで可)

④ 生前贈与

  • 贈与契約書
  • 過去の贈与税の申告書の控え
  • 相続時精算課税を選択していた場合はその届出書

自分でやるか、税理士に頼むか#

自分でやる税理士に依頼
向いている場合財産が預貯金中心/不動産は自宅1件で評価が単純/相続人が少ない/特例を使わない土地が複数・不整形/非上場株式がある/特例を使う/相続人が多い・疎遠/生前贈与が多い
費用実費のみ遺産総額の0.5〜1%程度が目安
リスク評価を誤ると、払いすぎ・追徴のどちらもあり得る——

判断の分かれ目は、土地の評価と特例の適用です。この2つは金額のインパクトが大きく、専門知識で結果が変わります。

税理士を選ぶときに聞くこと

  • 相続税の申告を年間どのくらい扱っているか — 相続に不慣れな事務所もあります
  • 書面添付制度を使っているか — 税務調査の確率を下げる効果が期待できます
  • 報酬の内訳 — 土地の筆数、相続人の数、非上場株式の有無で加算されるのが通例です
  • 二次相続まで見据えた提案があるか

納付が難しいとき#

相続税は金銭一括納付が原則です。それが困難な場合の制度があります。

制度内容注意
延納年賦での分割払い利子税がかかる。担保が必要な場合がある
物納相続財産そのもので納付延納でも困難な場合に限られる。物納に適した財産の要件がある

いずれも申告期限までに申請が必要です。「払えないから後で相談」では間に合いません。

納税資金の確保という観点では、生命保険が有効です(生命保険と相続税)。

分割がまとまらないとき#

申告期限は延びません。いったん法定相続分で分けたものとして申告・納付します。

このとき配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も使えないため、納税額が大きく膨らみます。「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付してください。3年以内に分割が確定すれば、更正の請求で特例を受けられます。

申告後に間違いに気づいたら#

  • 税額が少なすぎた → 修正申告。自主的に行えば加算税が軽減されます
  • 税額が多すぎた → 更正の請求。原則として申告期限から5年以内

土地の評価が過大だった、使える特例を見落としていた。こうした理由で還付を受けられることは実際にあります。「もう申告したから」と諦める必要はありません。

申告が必要かどうかの見当をつけるところから。財産の総額と家族構成を入れれば、その場で概算できます。無料・登録不要です。

相続税の概算を計算する

まとめ#

  • 期限は10か月。提出先は被相続人の住所地の税務署
  • 税額ゼロでも申告が必要な場合がある(配偶者の税額軽減、小規模宅地等の特例)
  • 預金の取引履歴は必ず取る
  • 判断の分かれ目は土地の評価と特例の適用
  • 延納・物納は申告期限までに申請
  • 分割がまとまらないなら分割見込書を必ず添付

よくある質問

Q. 相続税の申告は自分でできますか?
財産が預貯金中心で不動産も自宅1件、相続人も少ない、といった場合は可能です。国税庁の手引きと申告書作成コーナーが用意されています。ただし土地が複数ある、非上場株式がある、特例を使うといった場合は、専門家に依頼するほうが結果的に有利になることが多いです。
Q. 税理士報酬の相場はどのくらいですか?
一般に遺産総額の0.5〜1%程度が目安とされています。土地の筆数、相続人の数、非上場株式の有無などで加算されるのが通例です。見積りを取るときは、加算項目と、二次相続を見据えた提案の有無まで確認してください。
Q. 申告期限に間に合いそうにありません。
期限は原則として延長できません。分割がまとまらない場合は、いったん法定相続分で申告し、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付してください。財産の把握が終わらない場合も、判明している範囲で申告し、後から修正申告する形になります。無申告のまま放置するのが最も不利です。
Q. 税務署から「相続税についてのお尋ね」が届きました。
亡くなった方の財産状況から、申告が必要な可能性があると判断された場合に送られます。申告が不要でも、回答して返送するのが無難です。無視すると、後日調査につながることがあります。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。