相続税の基礎知識

生命保険と相続税|非課税枠500万円と、受取人による税金の違い

生命保険金には500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。この枠の計算方法、相続放棄した人が受け取った場合の扱い、契約者・被保険者・受取人の組み合わせで税目が変わる仕組み、そして相続対策として保険が効く3つの理由を解説します。

約5分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 相続人が受け取った死亡保険金には、500万円 × 法定相続人の数の非課税枠があります。
  • 相続放棄をした人や、孫・内縁のパートナーなど相続人以外が受け取った保険金には、この非課税枠は使えません。
  • 相続人以外が受け取ると、非課税枠が使えないうえに相続税額が2割加算されます。
  • 契約者・被保険者・受取人の組み合わせによって、相続税・所得税・贈与税のどれがかかるかが変わります。
  • 保険は、納税資金の確保、代償分割の原資、渡したい相手に確実に渡す手段として効きます。受取人は保険会社への申し出だけで変更できます。

生命保険は、相続対策として最もよく使われる手段のひとつです。理由は3つあり、いずれも他の方法では代替しにくいものです。

  1. 非課税枠がある — 預金のまま持つより課税対象が減る
  2. すぐ現金化できる — 遺産分割を待たずに受け取れる
  3. 渡す相手を指定できる — 遺言書に近い機能を持つ

非課税枠|500万円 × 法定相続人の数#

生命保険の非課税枠。現金で持つ場合と、一部を保険に移した場合の課税価格の比較。
基礎控除とは別枠です。死亡退職金にも同じ枠があります。

例えば、財産が現金5,000万円のみ、相続人が配偶者と子2人(3人)の場合。

全額を現金で持つ1,500万円を保険に移す
現金5,000万円3,500万円
保険金——1,500万円
保険金の非課税枠——△1,500万円
課税価格5,000万円3,500万円
基礎控除(4,800万円)△4,800万円△4,800万円
課税遺産総額200万円0円

同じ財産でも、持ち方を変えるだけで課税対象が変わります。

「法定相続人の数」の数え方

  • 相続放棄した人も、人数に含めます(放棄がなかったものとして数えます)
  • 養子の数には制限があります — 実子がいれば1人まで、いなければ2人まで
  • 基礎控除と同じ数え方です(基礎控除)

複数人が受け取る場合の按分

非課税枠は、受け取った保険金の割合に応じて按分されます。

相続人3人で非課税枠1,500万円。保険金が配偶者2,000万円、長男1,000万円、次男1,000万円(合計4,000万円)なら、

  • 配偶者:1,500万円 × 2,000/4,000 = 750万円
  • 長男:1,500万円 × 1,000/4,000 = 375万円
  • 次男:同じく 375万円

非課税枠が使えない人#

受取人非課税枠そのほか
相続人(配偶者・子など)使える
相続放棄をした人使えないただし法定相続人の数にはカウントされる
孫(代襲相続人でない)使えないさらに2割加算
内縁のパートナー使えないさらに2割加算

「孫を受取人にすれば世代を飛ばせて有利では」と考える方がいますが、非課税枠が使えず、税額が2割増しになるため、慎重な検討が必要です。

契約の形で税金が変わります#

ここが最も間違えやすい部分です。判定の基準は、誰が保険料を負担していたかです。

保険料の負担者被保険者受取人かかる税金
父父子相続税(非課税枠あり)
子父子所得税(一時所得)
父母子贈与税

所得税(一時所得)になる場合

子が保険料を負担し、父を被保険者、子を受取人にした場合です。

一時所得は「(受取額 - 払込保険料 - 50万円)× 1/2」が課税対象になります。受け取った額の半分以下しか課税されないため、相続税率が高い方にとっては有利になることがあります。

実務では、親が子に現金を贈与し、その資金で子が保険料を払う、という設計が使われます。ただし贈与の実態(贈与契約書、子の口座からの引き落とし、贈与税の申告)を整えておかないと、名義保険とみなされるおそれがあります。

贈与税になる場合

父が保険料を負担し、母を被保険者、子を受取人にした場合。父から子への贈与とみなされ、最も税負担が重くなりがちです。この形は避けるべきです。

相続対策として効く3つの理由#

① 納税資金を確保できる

相続税は原則として現金一括納付です。財産の大半が不動産だと、納税資金が足りず自宅を売ることになりかねません。

保険金は遺産分割を待たずに受け取れるため、申告期限(10か月)に間に合う現金として機能します。

② 代償分割の原資になる

自宅を長男が継ぎ、次男に金銭を払う(代償分割)。この代償金を用意する手段として、保険は非常に噛み合います。

長男を受取人にしておけば、他の相続人の同意なく受け取れ、そのまま代償金に充てられます(実家の相続で兄弟が揉めるパターン)。

③ 渡したい人に確実に渡せる

受取人指定の保険金は遺産分割の対象外なので、特定の人に確実に渡せます。遺言書に近い機能です。

また、原則として遺留分の計算にも含まれません。ただし、保険金額が遺産に比して著しく大きいなど特段の事情がある場合には、特別受益に準じて持戻しの対象とされた裁判例があります。過度に偏らせるのは避けてください。

注意しておきたいこと#

  • 加入には健康状態の告知が必要 — 病気になってからでは入れないことがあります
  • 一時払終身保険は、高齢でも加入しやすい商品として使われますが、条件を確認してください
  • 受取人の見直しを定期的に — 離婚した元配偶者のまま、亡くなった親のまま、という例が実際にあります
  • 入院給付金は別扱い — 受取人が本人なら相続財産になり、非課税枠は使えません

保険金の非課税枠を使い切れているか。財産の総額と家族構成を入れれば、その場で概算できます。無料・登録不要です。

相続税の概算を計算する

まとめ#

  • 非課税枠は500万円 × 法定相続人の数。基礎控除とは別枠
  • 相続放棄した人が受け取ると非課税枠は使えない(人数にはカウント)
  • 孫や内縁のパートナーが受取人だと、非課税枠なし+2割加算
  • 税目は誰が保険料を負担したかで決まる
  • 納税資金・代償分割の原資・確実に渡す手段として効く
  • 受取人の見直しを定期的に

よくある質問

Q. 非課税枠を使い切るには、いくらの保険に入ればいいですか?
相続人の数×500万円が上限です。相続人が3人なら1,500万円。すでに加入している保険金額を合計し、枠が余っていれば追加を検討する価値があります。ただし、老後資金を圧迫してまで加入するのは本末転倒です。
Q. 孫を受取人にするのは損ですか?
税負担の面では不利です。非課税枠が使えず、さらに相続税額が2割加算されます。ただし、確実に孫に渡したいという目的があるなら、税負担を承知のうえで選ぶこともあります。目的と負担を比べて判断してください。
Q. 受取人を変更するには、どうすればいいですか?
契約者が保険会社に申し出るだけで変更できます。受取人本人や他の家族の同意は不要です。離婚、再婚、受取人の死亡といった変化があったときは、忘れずに見直してください。
Q. 保険金は遺産分割で考慮されませんか?
原則として受取人固有の財産で、遺産分割の対象外です。ただし、保険金額が遺産の総額に比して著しく大きいなど特段の事情がある場合、特別受益に準じて持戻しの対象とされた裁判例があります。極端に偏った設計は避けたほうが安全です。

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