戸籍の集め方と相続人の確定|広域交付と法定相続情報一覧図
相続手続きの最初の関門である戸籍集めを解説します。出生から死亡までの戸籍をたどる方法、2024年に始まった広域交付の使い方と制限、除籍謄本と改製原戸籍の違い、そして手続きが格段に楽になる法定相続情報一覧図の作り方まで。
約5分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- 相続人を確定するには、亡くなった人の出生から死亡までの戸籍をすべてそろえる必要があります。
- 死亡時の戸籍から1つずつ前へさかのぼり、出生の記載が出てくるまで繰り返します。
- 2024年に始まった広域交付を使うと、本籍地が遠方でも最寄りの市区町村の窓口で請求できます。ただし請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹の戸籍は対象外で、代理人請求と郵送請求もできません。
- 郵送で請求する場合の手数料は、戸籍1通450円、除籍と改製原戸籍が1通750円というのが一般的です。
- 法定相続情報一覧図を作れば無料で何通でも交付され、5年間は再交付も受けられます。戸籍の束の代わりに各種手続きで使えます。
相続手続きは、ほぼすべてが「相続人が誰かを証明すること」から始まります。銀行の解約も、相続登記も、相続税の申告も同じです。
そして、この証明に使うのが戸籍です。ここでつまずいて、手続き全体が止まる方が非常に多い。この記事では、集め方と、集めた後に楽をする方法をまとめます。
なぜ「出生から死亡まで」必要なのか#
相続人を確定するには、その人に他に子がいないことを証明する必要があります。
死亡時の戸籍だけでは、過去の婚姻歴や認知した子は分かりません。だから出生までさかのぼって、空白のない戸籍をつなげる必要があるのです。
3種類の戸籍#
| 名称 | 内容 |
|---|---|
| 戸籍謄本(全部事項証明書) | 現在の戸籍。在籍者がいるもの |
| 除籍謄本 | 全員が抜けて(死亡・婚姻・転籍)閉鎖された戸籍 |
| 改製原戸籍 | 法改正で戸籍が作り替えられる前の、古い様式の戸籍 |
「かいせいげんこせき」または「はらこせき」と読みます。戸籍は過去に何度か様式が改められており、作り替えのときに、それ以前の情報(すでに婚姻や死亡で除かれた人)は新しい戸籍に引き継がれません。
つまり、改製原戸籍を見ないと分からない相続人がいる。ここが見落としの温床です。
たどり方#
- 死亡時の本籍地の市区町村で、死亡の記載がある戸籍を取る
- その戸籍の冒頭を見る — 「○年○月○日 ○○から転籍」「○年○月○日 改製」といった記載がある
- その前の戸籍を、記載された市区町村に請求する
- 出生の記載が出てくるまで、2〜3を繰り返す
本籍地を何度も移している方だと、5〜10通になることもあります。
広域交付を使う#
2024年から、本籍地以外の市区町村でも戸籍を請求できるようになりました。これが広域交付です。
- 最寄りの市区町村の窓口で、全国の戸籍をまとめて請求できます
- 本籍地が遠方でも、郵送請求が不要になります
ただし制限があります
| 制限 | 内容 |
|---|---|
| 請求できる人 | 本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)に限られます |
| 兄弟姉妹の戸籍 | 取れません。兄弟が相続人になるケースでは従来どおりの請求が必要 |
| 代理人 | 不可。弁護士や司法書士による職務上請求もできません |
| 郵送 | 不可。窓口に本人が行く必要があります |
| 対象外の戸籍 | コンピュータ化されていない古い戸籍は対象外。本籍地に請求します |
窓口では、顔写真付きの本人確認書類が必要です。運転免許証やマイナンバーカードを持参してください。
郵送で請求する場合
広域交付が使えないときは、本籍地の市区町村に郵送請求します。
- 請求書(市区町村のサイトからダウンロードできます)
- 定額小為替(郵便局で購入。戸籍1通450円、除籍・改製原戸籍1通750円が一般的)
- 本人確認書類のコピー
- 返信用封筒(切手を貼る)
- 請求者と被相続人の関係が分かる戸籍のコピー
何通必要か分からない場合は、多めの定額小為替を同封し、「不足分は追加請求してください」「余りは返却してください」と書き添えると、やり取りが1往復で済みます。
法定相続情報一覧図を作る#
戸籍が揃ったら、必ず作ってください。相続手続きの負担が劇的に変わります。
どういう制度か
集めた戸籍一式と、自分で作った相続関係の図を法務局に提出すると、登記官が内容を確認したうえで認証文付きの写しを交付してくれます。
- 無料
- 何通でも交付してもらえる
- 戸籍の束の代わりになる — 銀行、証券会社、法務局、税務署で使えます
- 5年間は再交付を受けられます
なぜ効くのか
戸籍の束は1組しかありません。銀行に提出すると、返ってくるまで他の手続きが止まります。原本還付の手続きをすれば返ってきますが、その分だけ時間がかかります。
一覧図を10通もらっておけば、銀行3行と証券会社と法務局の手続きを、同時に走らせられます。口座が多いご家庭ほど、効果が大きくなります。
申出の方法
- 戸籍一式を集める
- 法定相続情報一覧図を自分で作る(法務局のサイトに様式と記載例があります)
- 申出書を作成する
- 被相続人の本籍地・最後の住所地・申出人の住所地・被相続人名義の不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局に提出
- 確認後、認証文付きの写しが交付される(戸籍の原本も返却されます)
相続人を確定するときの確認ポイント#
- 前婚の子はいないか — 離婚しても親子関係は続きます
- 認知した子はいないか
- 養子縁組はしていないか — 相続税の計算では人数に制限があります
- 代襲相続は発生していないか — 子が先に亡くなっていれば、その子(孫)が相続人
- 兄弟姉妹が相続人の場合 — 半血の兄弟姉妹(父母の一方だけが同じ)の相続分は、全血の1/2
詳しくは相続人の範囲と法定相続分をご覧ください。
どのくらい時間がかかるか#
| 状況 | 目安 |
|---|---|
| 本籍を移していない、広域交付が使える | 数日〜1週間 |
| 本籍を数回移している | 2週間〜1か月 |
| 兄弟姉妹が相続人(広域交付が使えない) | 1〜2か月 |
| 数次相続(相続手続き中に相続人が死亡) | 2か月以上 |
相続税の申告期限は10か月。戸籍集めに2か月かかると、残りは8か月です。最初に着手するべき作業である理由がここにあります。
家族構成と本籍地を書き残しておくと、遺族の戸籍集めがぐっと楽になります。無料・登録不要です。
家族の情報を書き残すまとめ#
- 相続人の確定には出生から死亡までの連続した戸籍が要る
- 改製原戸籍を見ないと分からない相続人がいる
- 広域交付は便利だが、兄弟姉妹の戸籍は取れず、代理人・郵送も不可
- 窓口では「出生までさかのぼって」と伝える
- 法定相続情報一覧図を作れば、複数の手続きを並行できる。無料・何通でも
- 最初に着手する作業。ここが遅れると全部が遅れる
よくある質問
- Q. 戸籍はどこで取れますか?
- 原則は本籍地の市区町村ですが、2024年から広域交付が始まり、最寄りの市区町村の窓口でも請求できるようになりました。ただし、請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹の戸籍は対象外です。また代理人請求と郵送請求はできません。
- Q. 古い戸籍が読めません。
- 明治や大正の戸籍は手書きの毛筆で書かれており、読解が難しいことがあります。市区町村の窓口で内容を確認してもらう、司法書士や行政書士に依頼する、といった方法があります。法定相続情報一覧図の申出をすれば、登記官が内容を確認してくれるので、その過程で誤りに気づけることもあります。
- Q. 法定相続情報一覧図は、自分で作れますか?
- 作れます。法務局のサイトに様式と記載例が用意されています。手書きでもパソコンでも構いません。ただし記載に誤りがあると補正を求められるので、戸籍の内容を正確に反映させてください。司法書士に依頼することもできます。
- Q. 戸籍を集めたら、原本は返ってきますか?
- 返却されます。法定相続情報一覧図の申出でも、銀行や法務局の手続きでも、原本還付の扱いを受けられます。ただし手続きのたびに提出と返却を繰り返すと時間がかかるため、一覧図を複数枚もらっておくほうが効率的です。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。