小規模宅地等の特例|自宅の土地を最大80%減額できる条件
小規模宅地等の特例は、自宅や事業用の土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度です。特定居住用宅地等の面積上限330㎡、配偶者・同居親族・家なき子それぞれの取得者要件、使えないケースまで、条件を整理して解説します。
約5分で読めます・2026-09-05 公開
この記事の要点
- 小規模宅地等の特例は、自宅の敷地なら330㎡までの部分について評価額が80%減額されます。
- 配偶者が取得する場合は無条件で使えます。申告期限前に売却しても適用できます。
- 同居親族が取得する場合は、相続税の申告期限(10か月)まで所有と居住を継続することが要件です。
- 家なき子として別居の親族が取得する場合は、配偶者も同居親族もいないこと、3年以内の居住歴と過去の所有歴の要件があります。
- 適用には相続税の申告が必要で、申告期限までに遺産分割が確定していることが条件です。まとまらない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておきます。
相続税の負担を大きく左右するのが小規模宅地等の特例です。自宅の土地の評価額を最大80%減額できるため、「この特例が使えるかどうか」で税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。持ち家がある家庭にとっては、まず確認すべき制度です。
4つの区分と、減額の割合#
| 区分 | 対象 | 面積の上限 | 減額割合 |
|---|---|---|---|
| 特定居住用宅地等 | 自宅の敷地 | 330㎡ | 80% |
| 特定事業用宅地等 | 個人事業に使っていた土地 | 400㎡ | 80% |
| 特定同族会社事業用宅地等 | 同族会社の事業に使っていた土地 | 400㎡ | 80% |
| 貸付事業用宅地等 | アパート・駐車場など貸していた土地 | 200㎡ | 50% |
複数の区分を併用する場合には、面積の調整計算が必要になります(居住用と特定事業用は一定の範囲で完全併用が可能ですが、貸付事業用を含む場合は按分が必要です)。
以下では、最も多くの方に関係する特定居住用宅地等(自宅の土地)を中心に説明します。
自宅の土地|誰が取得すれば使えるか#
この特例は、誰が取得したかで適用の可否が決まります。取得者は次の3パターンに分かれます。
① 配偶者が取得する
最もシンプルです。居住や所有の継続要件はありません。配偶者が取得すれば、その後に売却しても、その家に住んでいなくても適用を受けられます。
② 同居していた親族が取得する
亡くなった方と同居していた親族が取得する場合、次の2つを相続税の申告期限(10か月)まで満たし続ける必要があります。
- 所有を継続すること(申告期限前に売却すると適用できません)
- 居住を継続すること(申告期限前に引っ越すと適用できません)
③ 別居の親族が取得する(いわゆる「家なき子」)
配偶者も同居親族もいない場合に限り、別居の親族でも適用できる余地があります。ただし要件が厳しく、主なものは次のとおりです。
- 相続開始前3年以内に、自己・配偶者・三親等内の親族・特別の関係がある法人が所有する家屋に住んだことがないこと
- 相続開始時に住んでいる家屋を、過去に自分が所有していたことがないこと
- 相続税の申告期限まで所有を継続すること(居住の継続は不要)
- 被相続人に配偶者も同居相続人もいないこと
見落としやすい論点#
二世帯住宅
建物内部で行き来できない完全分離型の二世帯住宅でも、建物全体が同一の登記(区分所有登記でない)であれば、同居として扱われ特例の対象になり得ます。逆に、区分所有登記されていると、被相続人が居住していた部分に対応する敷地しか対象になりません。登記の状態が結論を変える、注意すべき論点です。
老人ホームに入居していた場合
亡くなる前に老人ホームへ入居していても、要介護認定等を受けており、かつ届出のある施設に入居していたなどの要件を満たせば、自宅は「居住用」のまま扱われます。ただし、入居後にその家を賃貸に出していた場合は適用できません。
土地だけを持っていた場合
土地は被相続人、建物は子の名義、というケースでも、生計を一にしているなど一定の要件のもとで適用できることがあります。名義の分かれ方によって結論が変わるため、個別の確認が必要です。
適用を受けるための手続き#
- 相続税の申告書を提出すること。この特例は申告が適用の条件です。「特例を使えば税額がゼロだから申告不要」という判断はできません
- 申告期限(10か月)までに遺産分割が確定していること。まとまらない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておけば、後から更正の請求で適用できます
- 必要書類の添付(戸籍、遺産分割協議書の写し、住民票など。家なき子や老人ホームのケースでは追加の書類が必要です)
遺産分割との関係|誰に自宅を渡すか#
この特例は取得者によって適用の可否が変わるため、分け方を決める段階で税額が決まってしまうという性質があります。たとえば、同居していた子が自宅を取得すれば80%減額できるのに、別居の子が取得すると(家なき子に当たらなければ)一切減額できない、ということが起こります。
さらに、配偶者の税額軽減との組み合わせも重要です。一次相続で配偶者が自宅を取得すれば確実に特例を使えますが、二次相続で同居していない子が取得する場面では使えないおそれがあります。一次・二次を通して誰が自宅に住むのかを見据えて決めることが、結果的に大きな差になります。
「ななえの手帖」の概算計算は小規模宅地等の特例を反映していません。まずは特例を使わない場合の目安を確認し、そのうえで税理士に相談する材料としてお使いください。
相続税の概算を計算する相続した実家を売る場合は、空き家の3,000万円特別控除との関係も見ておく必要があります。自宅の評価額を把握するには、固定資産税の課税明細書や、国税庁が公表している路線価が参考になります。エンディングノートの資産の欄に、不動産の所在地と評価額の目安を書き出しておくと、検討がスムーズになります。
よくある質問
- Q. 小規模宅地等の特例を使うと、必ず相続税がゼロになりますか?
- いいえ。評価額が最大80%減額されるだけで、他に財産があれば相続税はかかります。ただし、自宅が財産の大半を占める家庭では、この特例だけで基礎控除以下になることは多くあります。
- Q. 330㎡を超える土地では使えませんか?
- 使えます。330㎡までの部分について80%減額され、超えた部分は通常の評価になります。すべてが対象外になるわけではありません。
- Q. 相続した自宅をすぐに売却する予定です。特例は使えますか?
- 配偶者が取得する場合は、売却しても適用できます。同居親族が取得する場合は、申告期限(10か月)まで所有と居住を続ける必要があるため、その前に売却すると適用できません。
- Q. 賃貸アパートの土地でも使えますか?
- 貸付事業用宅地等として、200㎡まで50%の減額を受けられます([賃貸不動産を相続したら](/guides/chintai-fudousan-souzoku))。ただし、相続開始前3年以内に貸付事業を始めた土地は、事業的規模で行っている場合を除いて対象外となる制限があります。
「ななえの手帖」でできること
読んだ内容を、そのまま形にできます。登録不要・無料。入力した内容はお使いの端末内にのみ保存され、 外部サーバには送信されません。
この記事を送る
ご家族や、気になっている方に。読んでほしい人に送っておくと、話を切り出しやすくなります。
あわせて読みたい
一次情報の確認先
この記事に出てくる制度や数値は、次の機関が公表している情報にもとづいています。 制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の内容をご確認ください。
- 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い
- e-Gov 法令検索民法・相続税法などの条文
登録会員(無料)
会員特典「手帖の道具箱」をお届けします
読んで終わりにせず、手を動かすところまで。無料の登録会員になると、印刷して書き込める4枚をお届けします。
- もしもの頁 冊子版もしもの時にご家族が行う手続きを、期限順に並べた一冊。連絡先の記入欄つき。
- 終活の棚卸しシート財産と契約を一年に一度書き出すためのシート。去年からの変化を追えます。
- 贈与契約書のひな形生前贈与の「言った・言わない」を残さないための契約書。記入して2通作れます。
- デジタル遺品チェックリストスマホ・アカウント・サブスクの棚卸しと、故人アカウント管理人の設定手順。
あわせて、年に一度「そろそろ手帖の更新を」とお声がけします。 財産も家族の連絡先も制度も一年で変わるので、思い出すきっかけがあるだけで手帖は生き続けます。
このサイトのエンディングノートと相続税の概算計算は、登録なしで無料でお使いいただけます。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。