相続税の基礎知識

不動産の相続税評価|路線価方式・倍率方式と、評価を下げられる要素

相続税で不動産をいくらと評価するかを解説します。土地の路線価方式と倍率方式、建物の固定資産税評価額、貸家や貸家建付地の減額、そして不整形地・間口狭小・がけ地など見落とすと損をする補正まで、調べ方つきでまとめました。

約5分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 相続税の評価額は時価ではなく、土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額で計算します。
  • 路線価は公示価格のおおむね80%が目安で、建物の固定資産税評価額は建築費のおおむね50〜60%程度です。
  • 使うのは相続開始日の属する年の路線価で、毎年7月頃に国税庁が公表します。
  • 不整形地・間口狭小・がけ地・私道・セットバックなどの補正は、見落とすと評価額が下がらず税額に直接響きます。
  • 評価額の払いすぎに気づいた場合、原則として申告期限から5年以内なら更正の請求で還付を受けられる可能性があります。

相続税の申告で、最も金額が大きく、最も専門性が高いのが不動産の評価です。

ここを誤ると、税金を払いすぎることも、後から追徴されることもあります。しかも払いすぎても税務署は教えてくれません。この記事では、評価の考え方と、見落としやすい減額要素をまとめます。

相続税の評価額は、時価ではありません#

相続税では、実際の売買価格ではなく、財産評価基本通達に沿って計算した金額を使います。

財産評価の方法時価との関係
土地路線価方式または倍率方式公示価格のおおむね80%が目安
建物固定資産税評価額がそのまま評価額建築費のおおむね50〜60%程度

土地①|路線価方式#

市街地の土地は、道路に付けられた路線価をもとに計算します。

路線価の調べ方

  1. 国税庁の路線価図・評価倍率表のページを開く
  2. 相続が発生した年を選ぶ(毎年7月頃に公表されます)
  3. 都道府県 → 市区町村 → 地域を選ぶ
  4. 地図上で、対象の土地が面している道路の数字を見る

「250D」と書かれていれば、1㎡あたり250,000円。アルファベットは借地権割合を示します(A=90%、B=80%、C=70%、D=60%、E=50%、F=40%、G=30%)。

どの年の路線価を使うか

相続開始日(死亡日)の属する年の路線価です。1月に亡くなった場合も、その年の路線価(7月公表)を使うため、公表を待つことになります。

土地②|倍率方式#

路線価が定められていない地域(郊外、農村部)では、倍率方式を使います。

固定資産税評価額は、毎年送られてくる課税明細書に載っています。評価倍率は、路線価図と同じ国税庁のページで確認できます。

計算はこちらのほうが単純です。ただし、宅地・田・畑・山林で倍率が違うので、地目を確認してください。

見落とすと損をする補正#

ここが専門家による差が出る部分です。同じ土地でも、補正を反映するかどうかで評価額が変わります。

要素内容
奥行価格補正奥行が短すぎる、または長すぎる土地は減額
不整形地補正三角形、旗竿地、L字型など、整形でない土地は減額
間口狭小補正道路に接する間口が狭い土地は減額
奥行長大補正間口に対して奥行が長すぎる土地は減額
がけ地補正傾斜地を含む土地は減額
無道路地道路に接していない土地は大きく減額
地積規模の大きな宅地一定面積以上で要件を満たす宅地は減額
私道不特定多数が通行するなら評価しない。特定の者が使う場合は30%評価
セットバックが必要な土地将来道路になる部分は減額
都市計画道路の予定地減額の対象
高圧線下地建築制限に応じて減額
騒音・墓地・嫌悪施設が近い利用価値が著しく低下していれば10%減額される場合があります

一方、加算される要素もあります。角地(側方路線影響加算)、二方向の道路に接する土地(二方路線影響加算)などです。

貸している場合の評価#

① 貸家建付地(自分の土地にアパートを建てて貸している)

借地権割合70%の地域で満室なら、1 -(0.7 × 0.3 × 1.0)= 0.79。約21%の減額になります。

賃貸割合は、課税時期に実際に貸している床面積の割合です。空室が多いと減額が小さくなります。ただし、一時的な空室であれば賃貸中として扱われる余地があります。

② 貸宅地(土地だけを貸して、他人が建物を建てている)

自用地評価額 ×(1 - 借地権割合)。借地権割合70%なら、30%の評価になります(借地・底地を相続したら)。

③ 貸家(建物を貸している)

固定資産税評価額 ×(1 - 借家権割合 × 賃貸割合)。満室なら30%の減額です。

マンションの評価#

マンション(居住用の区分所有財産)については、評価額が市場価格と大きく乖離していた問題を受けて、評価方法に補正が入る仕組みが導入されています。

築年数、総階数、所在階、敷地持分の狭小度から乖離率を計算し、評価額を補正します。タワーマンションを使った節税の効果は、以前より小さくなっています(マンションを相続したら)。

特例とセットで考える#

評価額が出たら、次は特例です。

評価と特例は連動しています。誰がどの不動産を取得するかを決める段階で、税額はほぼ決まります。

払いすぎに気づいたら#

申告後でも、原則として申告期限から5年以内なら更正の請求ができます。

土地の評価が過大だった、補正を見落としていた、特例を使えたのに使っていなかった。こうした理由で還付を受けられることは実際にあります。

不安がある場合、相続税に詳しい税理士にセカンドオピニオンを求める方法もあります。

評価額の目安は、固定資産税の課税明細書からもつかめます。財産の総額と家族構成で概算してみてください。

相続税の概算を計算する

まとめ#

  • 土地は路線価方式(市街地)か倍率方式(郊外)。公示価格の8割程度が目安
  • 建物は固定資産税評価額がそのまま
  • 使うのは相続開始日の属する年の路線価(7月公表)
  • 不整形・間口狭小・がけ地・私道などの補正を見落とすと払いすぎる
  • 現地を見ないと分からない減額要素がある
  • 貸していれば貸家建付地・貸宅地・貸家の減額
  • 払いすぎは5年以内なら更正の請求

よくある質問

Q. 路線価はどこで見られますか?
国税庁のウェブサイトで「路線価図・評価倍率表」を検索すると、無料で閲覧できます。相続が発生した年のものを選んでください。路線価は毎年7月頃に公表されるため、年の前半に相続が発生した場合は公表を待つことになります。
Q. 固定資産税評価額と相続税評価額は違うのですか?
違います。土地について、固定資産税評価額は公示価格の約70%、相続税評価額(路線価)は約80%が目安とされています。ただし建物については、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。倍率方式の地域では、固定資産税評価額に倍率を掛けて相続税評価額を求めます。
Q. 土地の評価は自分でできますか?
整形地で補正が少なければ可能です。ただし不整形地、複数の道路に接する土地、広い土地、傾斜地などは計算が複雑で、判断も必要になります。金額のインパクトが大きい部分なので、迷ったら税理士に依頼したほうが結果的に有利になることが多いです。
Q. 申告後に評価が高すぎたと分かりました。
原則として申告期限から5年以内であれば、更正の請求により還付を受けられる可能性があります。土地の評価減の見落としは実際によくあるため、不安があれば相続税に詳しい税理士にセカンドオピニオンを求めてみてください。

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。