相続税の基礎知識

相続税の税務調査|いつ来るか、何を見られるか、指摘されやすい5つ

相続税の税務調査は申告の1〜2年後の秋に多く、申告漏れの指摘で最も多いのは現金・預貯金です。調査の流れ、当日聞かれること、名義預金・生前贈与など指摘されやすい論点、そして調査の確率を下げる書面添付制度まで解説します。

約5分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 相続税の税務調査は、申告の1〜2年後の8月から11月に集中する傾向があります。
  • 調査は1日または2日間で、午前10時頃から午後4〜5時頃までが一般的です。
  • 申告漏れの指摘で最も多いのは現金・預貯金で、なかでも名義預金が典型です。
  • 税務署は過去5年程度の取引履歴を持って臨みます。申告の前に、自分で預金の動きを確認しておきます。
  • 税理士が作成する書面添付制度を使うと、調査の前に税理士への意見聴取が行われ、調査に至らずに済むことがあります。

相続税の申告を終えても、そこで完了とは限りません。税務調査が入ることがあります。

所得税や法人税に比べて、相続税は調査の割合が高い税目とされています。そして調査が入った場合、何らかの申告漏れが指摘される割合も高いのが実情です。

この記事では、何を見られるのか、どう備えるのかを整理します。

いつ、どう来るのか#

項目内容
時期申告の1〜2年後が多い。8月〜11月に集中する傾向があります
連絡原則として事前に電話で通知されます(税理士が関与していれば税理士へ)
形式任意調査。ただし正当な理由なく拒めば罰則があります
場所被相続人が最後に住んでいた自宅で行われることが多い
所要時間1日、または2日間。午前10時頃から午後4〜5時頃まで
出席者相続人(代表者だけでなく複数を求められることも)、税理士

調査の対象になりやすいケース#

  • 財産の額が大きい
  • 申告の内容と、税務署が把握している情報にずれがある
  • 現金・預貯金の割合に比べて、生前の収入が多い(使途不明の資金があると見られます)
  • 家族名義の預金が多い
  • 海外資産がある
  • 税理士が関与していない、または書面添付がない

税務署は、KSKシステム(国税総合管理システム)で過去の所得や不動産の取得状況を把握しています。「生涯でこれだけ稼いだのに、遺産がこれだけしかないのはなぜか」という視点で見られます。

指摘されやすい5つ#

① 名義預金(最も多い)

申告漏れの指摘で最も多いのが現金・預貯金で、その中心が名義預金です。

子や孫の名義でも、実質的に被相続人が管理していた預金は、被相続人の財産として扱われます。

見られるポイント内容
原資は誰か入金の出どころ。名義人の収入で説明できるか
通帳・印鑑・カードの保管者被相続人が持っていれば名義預金と判断されやすい
名義人が口座の存在を知っていたか知らなければ贈与は成立していません
届出印被相続人の印鑑と同じものを使っていないか
届出住所名義人の住所ではなく被相続人の住所になっていないか

② 亡くなる直前の出金

入院中や亡くなる直前に、まとまった現金が引き出されているケース。

手元に残っていれば「手許現金」として相続財産です。使ったなら、何に使ったかを説明する必要があります。

調査官は通常、過去5年分程度の取引履歴を職権で入手して臨みます。こちらが把握していない出金を指摘されると、その場で答えられません。

③ 生前贈与の申告漏れ

  • 相続開始前の一定期間内の贈与が加算されているか(3年から7年へ段階的に延長中)
  • 相続時精算課税を選択した贈与が加算されているか
  • 贈与税の申告をしていない贈与がないか

④ 家族名義の有価証券・保険

預金と同じ考え方です。保険料を誰が負担していたかが判定の基準になります。子名義の契約でも、実際は親が保険料を払っていれば、その部分は相続財産(または贈与)として扱われます。

⑤ 見落とされがちな財産

  • 貸金庫の中身
  • 書画骨董・貴金属・高級腕時計
  • ゴルフ会員権
  • 親族への貸付金(借用書がなくても、通帳の記録から把握されます)
  • 未収の家賃・地代
  • 海外の口座や不動産
  • 暗号資産

当日聞かれること#

午前は雑談のような形で、被相続人の人となりや家族の状況を聞かれます。ここで話した内容が、午後の質問につながります。

  • 被相続人の職業と経歴、退職金の額
  • 趣味(骨董、ゴルフ、車など。財産につながります)
  • 入院の経緯と、亡くなるまでの経過
  • 通帳や印鑑は誰が管理していたか
  • お子さんやお孫さんの職業と収入
  • 家族名義の預金の原資は何か
  • 貸金庫はあるか
  • 生前に大きなお金が動いたことはあるか

現物の確認

午後は、通帳、印鑑、金庫、仏壇、タンスなどを見せてほしいと求められることがあります。任意なので断ることはできますが、拒むとかえって疑われます。

備え方#

  1. 申告前に、過去5年分の取引履歴を自分で確認する — 大きな出金の説明を用意しておく
  2. 家族名義の預金を洗い出す — 名義預金に当たるものは、申告に含めておく
  3. 贈与の記録を整理する — 契約書、振込記録、贈与税の申告書
  4. 介護費用などの立替えは領収書とメモを残す
  5. 貸金庫の中身を確認しておく
  6. 書面添付制度を使う

書面添付制度

税理士が、申告書の作成にあたってどのような資料を確認し、どう判断したかを記載した書面を添付する制度です。

  • 税務署が調査に入る前に、まず税理士に意見を聴取する手続きが行われます
  • その段階で疑問が解消すれば、実地調査に至らないことがあります
  • 意見聴取で自主的に修正申告をすれば、加算税が課されない場合があります

税理士に依頼する際、書面添付に対応しているかを確認しておく価値があります。

指摘されたら#

状況課される税
申告額が少なかった(自主的に修正)延滞税(加算税は軽減または課されない場合あり)
調査で指摘されて修正過少申告加算税 + 延滞税
申告していなかった無申告加算税 + 延滞税
意図的に隠した重加算税 + 延滞税

重加算税は税率が非常に高く、時効も長くなります。隠すことのリスクは、想像以上に大きいと考えてください。

なお、指摘に納得できない場合は、そのまま修正申告に応じる義務はありません。更正処分を受けたうえで、再調査の請求や審査請求で争う道があります。

生前に財産を整理しておけば、遺族が説明できる状態を作れます。無料・登録不要で、入力内容は端末内にのみ保存されます。

財産を整理しておく

まとめ#

  • 調査は申告の1〜2年後、秋に多い。事前通知がある
  • 自宅で行われるのは、保管状況と生活の実態を見るため
  • 最も多い指摘は名義預金。通帳・印鑑を誰が持っていたかが分かれ目
  • 亡くなる直前の出金は必ず聞かれる。使途の記録を
  • 税務署は過去5年程度の取引履歴を持って臨む。先に自分で確認する
  • 書面添付制度で、調査に至らないことがある
  • 分からないことは分からないと答える

よくある質問

Q. 税務調査は断れますか?
任意調査なので強制ではありませんが、正当な理由なく拒否したり虚偽の答弁をしたりすると罰則の対象になります。日程の変更は相談できるので、都合が悪ければ税務署または税理士に伝えてください。
Q. 申告を税理士に頼んでいませんが、調査に立ち会ってもらえますか?
調査の通知を受けた後でも、税理士に依頼して立ち会ってもらうことは可能です。申告内容の確認からになるため費用はかかりますが、専門用語のやり取りや指摘への対応を任せられます。心配な場合は早めにご相談ください。
Q. 孫名義の預金は、必ず名義預金になりますか?
なりません。孫自身が口座を管理し、通帳や印鑑を保管し、贈与の事実(契約書や振込記録)があれば、孫の財産です。判断されるのは実態です。「渡した」と言えるだけの形を整えておくことが重要になります。
Q. 申告漏れが見つかったら、いくら払うことになりますか?
不足していた相続税本税に加え、過少申告加算税と延滞税がかかります。意図的な隠ぺいと判断されると重加算税となり、負担が大きく増えます。調査の連絡が来る前に自主的に修正申告すれば、加算税が軽減または課されない場合があります。

「ななえの手帖」でできること

読んだ内容を、そのまま形にできます。登録不要・無料。入力した内容はお使いの端末内にのみ保存され、 外部サーバには送信されません。

この記事を送る

ご家族や、気になっている方に。読んでほしい人に送っておくと、話を切り出しやすくなります。

LINEで送るXに投稿

あわせて読みたい

「相続税の基礎知識」の記事をすべて見る解説記事の一覧を見る

一次情報の確認先

この記事に出てくる制度や数値は、次の機関が公表している情報にもとづいています。 制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の内容をご確認ください。

記事に出てくる言葉の意味は用語集にまとめています

登録会員(無料)

会員特典「手帖の道具箱」をお届けします

読んで終わりにせず、手を動かすところまで。無料の登録会員になると、印刷して書き込める4枚をお届けします。

  • もしもの頁 冊子版もしもの時にご家族が行う手続きを、期限順に並べた一冊。連絡先の記入欄つき。
  • 終活の棚卸しシート財産と契約を一年に一度書き出すためのシート。去年からの変化を追えます。
  • 贈与契約書のひな形生前贈与の「言った・言わない」を残さないための契約書。記入して2通作れます。
  • デジタル遺品チェックリストスマホ・アカウント・サブスクの棚卸しと、故人アカウント管理人の設定手順。

あわせて、年に一度「そろそろ手帖の更新を」とお声がけします。 財産も家族の連絡先も制度も一年で変わるので、思い出すきっかけがあるだけで手帖は生き続けます。

このサイトのエンディングノートと相続税の概算計算は、登録なしで無料でお使いいただけます。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。