実家じまいとは|進め方の全体像と、始めるベストなタイミング
実家じまいとは、誰も住まなくなる実家を片づけ、売却や解体で手放すことです。親が元気なうちに進める場合と、亡くなった後に進める場合の違い、6つのステップ、後回しにすると何が起きるかを解説します。
約7分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- 実家じまいとは、誰も住まなくなる実家を片づけ、売却や解体で手放すことです。
- 進め方は、親の意向を聞く・名義と権利関係を確認する・兄弟で方針を共有する・費用を把握する・どうするかを決める・実行する、の6ステップです。
- 始めるのに最もよいのは親が元気で意思表示ができるうちです。判断能力が低下すると売却も贈与もできなくなり、成年後見の申立てが必要になります。
- 2024年4月から相続登記が義務化され、取得を知った日から3年以内の申請が必要になりました。名義をそのままにして放置することはできなくなっています。
- 親に切り出すときは1回で決めようとせず、ニュースなどきっかけを外に置いて、話題にできれば十分と考えます。
実家じまいとは、誰も住まなくなる実家を片づけ、売却や解体によって手放すことをいいます。「墓じまい」と同じで、はっきりした定義がある言葉ではありませんが、近年の相続相談で最も多いテーマのひとつになりました。
難しいのは、手続きそのものより決められないことです。誰も住まないと分かっているのに、思い出があり、親の気持ちがあり、兄弟の意見が割れる。そうして先延ばしにするうちに、選択肢が減っていきます。
なぜ今、実家じまいが増えているのか#
- 子が実家に戻らない — 就職や結婚で離れ、生活の拠点が別にある
- 親が施設に入る — 家はそのまま、誰も住まない状態が数年続く
- 空き家に対する規制が強まった — 管理不全と判断されると固定資産税の負担が増す
- 相続登記が義務化された — 「名義はそのまま」で放置できなくなった
- 売れる家が減っていく — 地方では買い手がつかない地域が広がっている
全国の空き家は900万戸を超え、住宅全体の1割以上を占める水準に達しました。その多くが、相続をきっかけに生まれています。
2つのパターン|生前か、相続後か#
実家じまいは、親が元気なうちに進めるか、亡くなった後に進めるかで難易度がまったく違います。
| 親が元気なうち | 亡くなった後 | |
|---|---|---|
| 本人の意思確認 | できる | できない |
| 売却の手続き | 本人が売れる | 相続登記をしてから |
| 判断能力を失った場合 | —— | 成年後見が必要になることも |
| ものの要不要 | 本人に聞ける | 推測するしかない |
| 兄弟の合意 | 親の意向が基準になる | 全員の合意が必要 |
| 心理的な負担 | 重い(親に切り出しにくい) | とても重い(時間もない) |
進め方|6つのステップ#
ステップ1|親の意向を聞く
最初にやるのは片づけではなく、話をすることです。
- 将来この家をどうしたいか(残したいのか、任せるのか)
- 施設に入る可能性をどう考えているか
- 売ってもいいと思っているか
- これだけは残してほしいものは何か
切り出し方については、この記事の最後で触れます。1回で結論を出そうとしないことが、いちばんのコツです。
ステップ2|名義と権利関係を確認する
これを先にやらないと、後で全部が止まります。
- 登記名義は誰か — 祖父名義のまま、というケースは珍しくありません(実家の相続登記)
- 共有になっていないか — 共有者が亡くなっていれば、その相続人全員の合意が要ります
- 抵当権が残っていないか — 完済済みでも抹消登記をしていないことがあります
- 境界は確定しているか — 未確定だと売却時に測量が必要になります
- 農地や借地ではないか — 手続きがまったく変わります(農地・山林を相続したら)
登記事項証明書は法務局で誰でも取得できます。まずこれを1通取ることから始めてください。
ステップ3|兄弟で方針を共有する
実家じまいで最も揉めるのは、ものでも金額でもなく「勝手に進めた」という感情です。
近くに住む子が一人で片づけを担い、遠方の兄弟が後から「あれを捨てたのか」と言う。よくある構図です(兄弟が揉めるパターン)。作業を分担できなくても、進捗を共有するだけで摩擦はかなり減ります。写真を撮ってグループチャットに流す、程度で構いません。
ステップ4|片づける
最も時間がかかる工程です。順番を守ると効率が変わります。書類 → 貴重品 → 思い出の品 → 家具や日用品。いきなり大物から手をつけないでください。
書類の中に権利証、保険証券、通帳が紛れていることがあります。詳しくは実家の片づけの進め方を、仏壇や神棚、お墓の扱いはこちらをご覧ください。
ステップ5|どうするかを決める
選択肢は大きく4つです。
| 選択肢 | 向いている場合 |
|---|---|
| そのまま売る | 建物にまだ価値がある、買い手がつく立地 |
| 解体して土地を売る | 築古で建物に値段がつかない |
| 貸す | 需要があり、修繕費を回収できる見込みがある |
| 持ち続ける | 将来使う予定がある(維持費の覚悟が要る) |
判断の基準は空き家になった実家をどうするかで詳しく解説しています。
ステップ6|手放す
売却なら媒介契約から引き渡しまで、通常3か月〜半年。解体なら1〜2か月。いずれも思ったより時間がかかります(手順は実家の売却の流れ)。
相続後に売る場合は、先に相続登記をしないと売れません。ここで詰まる方が非常に多いところです。
後回しにすると、何が起きるか#
① 固定資産税が上がることがある
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が軽減されています(200㎡以下の部分で6分の1)。
ところが、管理されていない空き家が特定空家等や管理不全空家等に指定され、市区町村から勧告を受けると、この軽減がなくなります。実質的に税額が数倍になり得ます。
② 建物が傷み、売れなくなる
人が住まない家は驚くほど早く傷みます。換気されず湿気がこもり、シロアリや雨漏りが進行します。「そのうち売ろう」と思っているうちに、解体しか選べなくなります。
③ 相続人が増えていく
最も深刻なのがこれです。放置している間に相続人が亡くなると、その子が新たな相続人になります(数次相続)。
兄弟2人の共有が、次の代では4人、その次では8人。会ったこともない親戚全員の実印が必要になり、事実上、売ることも壊すこともできない不動産になります。
④ 管理責任と、近隣トラブル
倒壊、屋根材の飛散、庭木の越境、不法投棄。空き家が原因で損害が生じれば、所有者が責任を問われます。遠方に住んでいても、免れるわけではありません。最低限やるべきことは空き家の管理にまとめました。
費用の全体像#
実家じまいには、まとまった費用がかかります。
- 片づけ・不用品処分 — 一戸建てで数十万円規模になることも
- 解体 — 木造30坪で100万円台が目安(地域と立地で大きく変わります)
- 測量 — 境界が未確定の場合
- 仲介手数料 — 売却価格に応じて
- 税金 — 譲渡所得税
一方で、空き家の3,000万円特別控除をはじめ、負担を軽くする制度もあります。詳しくは実家じまいの費用と実家を相続したときの税金をご覧ください。
親に切り出すときのコツ#
この話は、言い方を誤ると「家を売って金にしたいのか」と受け取られます。実際にそう受け取られて何年も話が進まなくなる例は、少なくありません。
- 「売る」から入らない — まず「片づけを手伝いたい」から始める
- 主語を自分にする — 「私が困らないように、どこに何があるか教えてほしい」
- きっかけを外に置く — 「相続登記が義務になったんだって」とニュースを枕にする
- 自分の話を先にする — 自分のエンディングノートを書いて見せる
- 1回で決めようとしない — 目標は「話題にできた」ことで十分
帰省、お盆、正月、お彼岸。機会は年に何度もあります。急がば回れ、が結果的にいちばん早く進みます。
「どこに何があるか」を親子で共有するところから。9項目のフォームに沿って書き出せます。無料・登録不要、入力内容は端末内にのみ保存されます。
実家の情報を書き出すまとめ#
- 実家じまいは生前に進めるほうが、あらゆる面で楽
- まず登記名義と権利関係の確認から。片づけは後
- 揉めるのは金額ではなく「勝手に進めた」という感情
- 放置すると固定資産税・建物の劣化・相続人の増加という形でコストが増える
- 相続登記は3年以内が義務
- 切り出すときは「売る」ではなく「片づけ」から
よくある質問
- Q. 実家じまいは、いつ始めるのがいいですか?
- 親が元気で、意思表示ができるうちです。判断能力が低下すると売却も贈与もできなくなり、成年後見の申立てが必要になります。「まだ早い」と感じる時期が、実はちょうどよいタイミングです。
- Q. 親が「絶対に売らない」と言います。どうすればいいですか?
- 無理に進めても関係が壊れるだけです。売却の話はいったん置き、「片づけを手伝う」「どこに何があるか教えてもらう」ところから始めてください。名義と権利関係の確認だけでも進めておくと、いざというときの選択肢が残ります。
- Q. 兄弟の意見が割れています。
- まず「維持し続けた場合の年間コスト」を全員で確認するのが有効です。固定資産税、火災保険、光熱費の基本料金、草刈りや見回りの手間。感情論ではなく数字を並べると、話が具体的になります。それでもまとまらない場合は、第三者を交えた話し合いを検討してください。
- Q. 遠方に住んでいて、片づけに通えません。
- 不用品回収や遺品整理の事業者に依頼する方法があります。ただし費用の幅が大きく、トラブルも報告されているため、複数社から見積りを取り、内訳を確認してください。作業前に貴重品と書類だけは自分で確認しておくことをおすすめします。
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