マンションを相続したら|評価ルールの改正・管理費・売却の注意点
マンションの相続で必要な手続きと注意点を解説します。2024年から変わった居住用区分所有財産の評価ルール、管理費や修繕積立金の滞納が買主に承継される問題、管理組合への届出、賃貸中の場合の扱い、売却の判断まで。
約6分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- 2024年から居住用区分所有財産の評価ルールが変わり、評価水準が0.6未満なら0.6になるよう評価額が引き上げられます。築浅・高層階ほど影響が大きく、従来の2倍近くになる例もあります。
- 地階を除く階数が2以下の低層の建物などは、この新しい評価ルールの対象外です。
- 管理費や修繕積立金の滞納は買主に引き継がれるため、売却時に清算が必要です。
- 小規模宅地等の特例は敷地権が対象で、330㎡を超えないことが多いため全部を使えることが多いです。賃貸中なら貸付事業用宅地等として200㎡まで50%減額になります。
- 空き家の3,000万円特別控除はマンションでは使えません。戸建てとの大きな違いです。
マンション(区分所有建物)の相続は、戸建てと違う論点がいくつかあります。評価ルールが2024年から変わったこと、そして管理費の滞納が買主に引き継がれることが、特に重要です。
すぐにやること#
- 管理組合・管理会社に連絡する — 所有者が変わったことを届け出ます
- 管理費・修繕積立金の引き落とし口座を変える — 故人の口座は凍結されます
- 滞納がないか確認する — 管理会社に残高を照会できます
- 火災保険を確認する — 契約者が亡くなった場合の扱いを保険会社へ
- 賃貸中なら賃借人と管理会社に通知する(賃貸不動産を相続したら)
評価ルールが変わりました#
従来、マンションの相続税評価額は市場価格と大きく乖離していました。特にタワーマンションの高層階では、評価額が市場価格の3割程度ということもあり、いわゆる「タワマン節税」が問題視されていました。
これを受けて、2024年(令和6年)1月1日以後の相続・贈与から、居住用の区分所有財産の評価方法に補正が入ることになりました。
しくみ
- 築年数・総階数・所在階・敷地持分の狭小度の4つの要素から、評価乖離率を計算します
- その逆数が評価水準です
- 評価水準が0.6未満(=市場価格の6割にも満たない)なら、0.6になるように評価額を引き上げます
- 評価水準が1を超える(=市場価格より高い)なら、1になるように引き下げます
- 0.6以上1以下なら、補正はありません
対象になるもの・ならないもの
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 居住用の区分所有財産(分譲マンションの住戸) |
| 対象外 | 地階を除く階数が2以下の建物(低層のアパートなど) |
| 対象外 | 区分所有者が全部の専有部分を所有している建物(二世帯住宅など) |
| 対象外 | 事業用の区分所有財産(オフィス、店舗) |
| 対象外 | たな卸商品等に該当するもの |
計算はやや複雑なので、申告の際は税理士に確認することをおすすめします。国税庁が計算ツールを公開しています。
管理費・修繕積立金の扱い#
① 未払分は債務控除できます
相続開始時点で未払いだった管理費・修繕積立金は、相続税の計算で債務として差し引けます。請求書や管理会社の残高証明を保管してください。
② 積み立てた修繕積立金は返ってきません
すでに支払った修繕積立金は管理組合のものであり、売却しても返金されません。売買価格に織り込まれている、という整理になります。
③ 滞納は買主に引き継がれます
故人が長期入院していた、認知症で支払いが止まっていた。こうした事情で滞納が積み上がっているケースは実際にあります。早めに管理会社へ照会してください。
確認しておきたいこと#
| 項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| 管理費・修繕積立金の月額 | 保有コスト。空室でもかかります |
| 修繕積立金の残高 | 不足していると、将来の一時金徴収や値上げがあります |
| 長期修繕計画 | 大規模修繕の時期と費用の見込み |
| 過去の大規模修繕の履歴 | 実施されていないと、劣化が進んでいる可能性 |
| 管理規約 | ペット、楽器、賃貸の可否など |
| 駐車場の契約 | 専用使用権か、別契約か |
| 耐震基準 | 1981年6月以前の旧耐震か。売却価格と住宅ローンに影響します |
これらは重要事項調査報告書として管理会社に発行してもらえます(有料)。売却時には必須の資料です。
小規模宅地等の特例#
マンションでも使えます。敷地権(土地の持分)が特例の対象です。
- 特定居住用宅地等 — 330㎡まで80%減額。マンションの敷地持分は330㎡を超えることがまずないため、全部が対象になることが多いです
- 取得者の要件(配偶者、同居親族、家なき子)は戸建てと同じです(小規模宅地等の特例)
- 賃貸中なら貸付事業用宅地等(200㎡・50%減)
持つか、売るか#
持ち続ける場合のコスト
- 管理費・修繕積立金 — 空室でも毎月かかります。戸建ての空き家より固定費が高いのが特徴です
- 固定資産税・都市計画税
- 修繕積立金の値上げ — 築年数が進むと段階的に上がる計画が一般的です
- 大規模修繕の一時金 — 積立不足なら徴収されることがあります
戸建ての空き家と違い、管理は組合がしてくれるので放置しても荒れにくい反面、固定費が確実に出ていきます。「とりあえず持っておく」のコストは、戸建てより高くつきます。
売る場合
手順は戸建てと同じです(実家の売却の流れ)。マンション特有の注意点は次のとおり。
- 滞納があれば清算が必要
- 重要事項調査報告書を管理会社に依頼する
- 旧耐震のマンションは、住宅ローンが付きにくいことがあり、売却価格に影響します
- 同じマンション内の他の住戸の売出事例が、最も参考になる相場情報です
マンションの管理費、修繕積立金、管理会社の連絡先。書き残しておくと、引き継ぐ人が滞納せずに済みます。無料・登録不要です。
不動産の情報を書き残すまとめ#
- 管理費の引き落とし口座を早く変える。凍結すると滞納が始まる
- 2024年から評価ルールが変更。市場価格の6割を下回らないよう補正される
- 滞納した管理費は買主に引き継がれる。売却時に清算が必要
- 未払分は債務控除できる
- 小規模宅地等の特例は敷地権が対象。330㎡を超えないことが多く、全部使えることが多い
- 空き家の3,000万円特別控除は対象外(戸建てとの大きな違い)
- 空室でも管理費と修繕積立金が出ていく。持ち続けるコストは戸建てより高い
よくある質問
- Q. マンションの評価ルール改正で、税額はどのくらい上がりますか?
- 物件によって大きく異なります。築浅・高層階・敷地持分が小さい物件ほど影響が大きく、従来の評価額の2倍近くになる例もあります。逆に、低層の古いマンションではほとんど変わらないこともあります。国税庁が計算ツールを公開しているので、確認してみてください。
- Q. 管理費の滞納があります。相続放棄すれば免れますか?
- 相続放棄をすれば、被相続人の滞納債務は承継しません。ただし放棄は財産を選べず、すべてを放棄することになります。また、放棄時にその物件を現に占有していた場合、保存義務が残ることがあります。滞納額と物件の価値を比べて判断してください([相続放棄の手続き](/guides/souzoku-houki))。
- Q. 相続したマンションを賃貸に出したいのですが。
- まず管理規約で賃貸が禁止されていないかを確認してください。次に、小規模宅地等の特例を使う予定があるなら注意が必要です。特定居住用として特例を使う場合、申告期限までの居住継続が要件になることがあります。また、空き家の3,000万円控除はそもそもマンションでは使えません。
- Q. 旧耐震のマンションは売りにくいですか?
- 住宅ローン控除の要件や金融機関の融資姿勢に影響するため、買主が限られる傾向があります。ただし耐震診断や耐震改修が済んでいれば評価は変わります。管理組合に耐震診断の実施状況を確認してみてください。立地が良ければ、建替えや敷地売却の可能性が価格に反映されることもあります。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。