銀行口座の凍結と解約手続き|必要書類と、葬儀費用の仮払い制度
亡くなると銀行口座は凍結されます。凍結される仕組み、解約に必要な書類、手続きの流れ、そして遺産分割前でも葬儀費用などを引き出せる「預貯金の仮払い制度」(上限150万円)の使い方までまとめました。
約5分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- 銀行は名義人が亡くなったことを把握した時点で口座を凍結します。凍結されると入出金も引き落としも止まります。
- 預貯金の仮払い制度を使えば、遺産分割前でも相続人が単独で払い戻しを請求できます。上限は同一の金融機関で150万円です。
- 解約には、遺産分割協議書と相続人全員の押印、印鑑証明書、戸籍一式などが必要です。印鑑証明書には発行後3〜6か月以内といった期限の指定があります。
- 払い戻しは、書類の提出から1〜3週間程度で指定の口座に振り込まれます。
- 死亡日時点の残高証明書は必ず取っておきます。相続税の申告と遺産分割の両方で使います。
亡くなったことを金融機関が把握すると、その方の口座は凍結されます。入金も出金も自動引き落としも止まります。
この記事では、凍結の仕組み、解約までの手続き、そして葬儀費用が払えないときの対処法をまとめます。
いつ凍結されるのか#
役所に死亡届を出しても、その情報が銀行に自動で伝わるわけではありません。金融機関が死亡の事実を知った時点で凍結されます。
- 遺族が金融機関に連絡した
- 新聞のお悔やみ欄や訃報で把握した
- 窓口での会話などから把握した
凍結されると何が止まるか#
- 預金の引き出し・振込
- 公共料金・携帯・保険料などの自動引き落とし
- 家賃や年金の入金
- 定期預金の満期処理
- 貸金庫の開扉
引き落としが止まると、電気やガスが止まる、保険が失効する、といったことが起こります。故人名義で契約している公共料金は、早めに名義変更か解約をしてください。
葬儀費用が払えないとき|預貯金の仮払い制度#
遺産分割が終わるまで一切引き出せないと、葬儀費用や当面の生活費に困ります。そのための制度があります。
金融機関の窓口で使える仮払い
例えば、預金が900万円、相続人が子2人(法定相続分は各1/2)の場合。
- 計算上は 900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円
- 上限150万円以内なので、150万円まで引き出せます
この上限は金融機関ごとなので、複数の銀行に口座があれば、それぞれで請求できます。
必要書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式(または法定相続情報一覧図)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 請求する相続人の印鑑証明書
- 金融機関所定の請求書
他の相続人の同意は不要です。単独で請求できます。ただし戸籍一式は必要なので、まったく準備なしにその日のうちに、というわけにはいきません。
家庭裁判所の保全処分
150万円では足りない場合、家庭裁判所に仮分割の仮処分を申し立てる方法もあります。ただし遺産分割の調停や審判が申し立てられていることが前提で、時間もかかります。
口座の解約・払戻しの手続き#
全体の流れ
- 金融機関に死亡を連絡する — 相続手続きの窓口を案内されます
- 残高証明書を請求する — 相続開始日時点の残高。相続税の申告に使います
- 必要書類を集める
- 相続届(金融機関所定の用紙)に相続人全員が署名・実印を押す
- 書類一式を提出する
- 指定口座へ払い戻される — 提出から1〜3週間程度
必要書類(遺産分割協議で決めた場合)
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式 | 法定相続情報一覧図で代替できます |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 同上 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 発行後3〜6か月以内などの指定があります |
| 遺産分割協議書 | 相続人全員の実印 |
| 金融機関所定の相続届 | 窓口で受け取ります |
| 被相続人の通帳・キャッシュカード・証書 | 紛失していても手続きは可能です |
遺言書がある場合は、遺言書(自筆証書なら検認済証明書つき)と、遺言執行者がいればその資格を証する書面が必要です。
つまずきやすいところ#
① 金融機関ごとに書類の様式が違う
相続届の様式も、印鑑証明書の有効期間も、金融機関によって異なります。まず電話で必要書類を確認してから動くと、二度手間を避けられます。
② 相続人全員の押印が必要
遠方や疎遠な相続人がいると、ここで時間がかかります。書類を郵送で回すことになるので、余裕をみて1〜2か月を見込んでください。
③ 口座の存在が分からない
ネット銀行は通帳も郵便物もありません。手がかりは、
- メールの受信履歴
- スマホにインストールされたアプリ
- 他行口座からの振込履歴
- クレジットカードの引き落とし口座
- 確定申告書の控え
心当たりのある金融機関には、全店照会を依頼できます。その金融機関に口座があるかどうかを調べてもらえる仕組みです。
④ 貸金庫が開けられない
貸金庫も凍結されます。開けるには相続人全員の立会いまたは同意が必要で、中に遺言書が入っている可能性があるため堂々巡りになりがちです。金融機関によって手続きが異なるので、まず相談してください。
残高証明書は必ず取っておく#
相続税の申告に必要になるほか、遺産分割の話し合いでも基準になります。
- 相続開始日(死亡日)時点の残高で請求します
- 定期預金は、経過利息の計算書もあわせて依頼してください
- 相続人の1人が単独で請求できます
- 発行手数料がかかります(数百円〜千円程度)
また、過去の取引履歴も請求できます。生前の資金移動を確認したい場合、税務調査で聞かれる大きな出金を説明したい場合に役立ちます。
取引のある金融機関を書き残しておくだけで、遺族が口座を探す手間がなくなります。無料・登録不要です。
口座の情報を書き残すまとめ#
- 凍結は金融機関が死亡を知った時点。届出と連動はしていない
- 凍結前に引き出しても、その現金は相続財産
- 仮払い制度で、分割前でも引き出せる(同一金融機関で150万円まで)
- 仮払いは他の相続人の同意なしで単独請求できる
- 法定相続情報一覧図を作ると、複数行の手続きを並行できる
- 残高証明書は必ず取る。定期は経過利息の計算書も
よくある質問
- Q. 死亡を銀行に伝えなければ、口座は凍結されませんか?
- 伝えなければすぐには凍結されないことが多いですが、おすすめしません。引き出した現金も相続財産であり、使途を説明できないと相続人間で争いになります。また、財産を処分したとみなされて相続放棄ができなくなるおそれもあります。
- Q. 公共料金の引き落としが止まって困っています。
- 故人名義の契約は、早めに名義変更または解約してください。電気・ガス・水道・携帯・インターネットが対象です。実家が空き家になる場合でも、電気と水道は止めないほうがよいことがあります(換気時の照明、通水のため)。
- Q. 相続人の1人と連絡が取れず、解約できません。
- 原則として相続人全員の署名押印が必要なので、そのままでは進みません。まず所在を調べ(戸籍の附票で住所を追えます)、それでも不明なら家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる方法があります。仮払い制度なら単独で請求できるので、当面の資金はそちらで確保してください。
- Q. 残高証明書はいつ時点のものを取ればいいですか?
- 相続開始日(死亡日)時点のものです。相続税の申告では、この日の残高で評価します。定期預金がある場合は、同日時点で解約したと仮定した経過利息の計算書もあわせて請求してください。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。