相続した不動産の扱い

相続した不動産を売るまでの段取り|登記・遺産分割・必要書類

相続した不動産は、そのままでは売りに出せません。遺産分割を決め、相続登記で名義を変えて、はじめて売却できる状態になります。名義が祖父のままだったとき、相続人に認知症の方がいるとき、換価分割にするときの契約書の書き方まで、売る前に片づけることを順に整理しました。

約4分で読めます・2026-09-10 公開

この記事の要点

  • 相続した不動産は、名義が亡くなった方のままでは売れません。先に相続登記を済ませる必要があります。
  • 相続登記は2024年4月から義務化され、取得を知った日から3年以内に申請しないと過料の対象になります。
  • 遺産分割が決まらないうちは登記も売却も進みません。売ることが決まっているなら、換価分割を選ぶのが素直です。
  • 名義が祖父のままなど何代も飛んでいる場合は、途中の相続人全員の同意が必要になり、時間が一気に伸びます。
  • 相続人に認知症の方や未成年者がいると、成年後見人や特別代理人の選任が必要になり、数か月かかります。

「相続した実家を売ろう」と決めて不動産会社に行っても、すぐには話が進みません。名義が亡くなった方のままの不動産は、売買契約を結べないからです。

売却そのものの進め方は実家の売却の流れにまとめています。ここでは、その手前——売れる状態にするまでの段取りを扱います。

売れる状態にするまでの3段階#

段階やること目安期間
1. 相続人と財産の確定戸籍を集めて相続人を確定し、不動産の内容を確認する1〜2か月
2. 遺産分割の決着誰がどう取得するかを決め、遺産分割協議書を作る1か月〜(もめると年単位)
3. 相続登記法務局に申請して名義を変える申請から1〜2週間

書類集めと並行して査定を取ることはできます。ただし売買契約は登記の完了後になります。

順調にいって3〜4か月。もめれば年単位です。取得費加算の特例や空き家の3,000万円特別控除には期限があるので、早く動くほど選択肢が残ります。

相続登記は義務になりました#

2024年4月1日から、相続登記は義務です。不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請しなければならず、正当な理由なく放置すると10万円以下の過料の対象になります。

  • 施行前に発生した相続も対象です(2027年3月末までが期限の目安)
  • 遺産分割がまとまらない場合は、相続人申告登記という簡易な手続きで義務を果たせます
  • ただし相続人申告登記は、名義が変わるわけではないので、それだけでは売れません

売ることが決まっているなら、換価分割#

兄弟で分けるために売るのであれば、遺産分割の方法のうち換価分割——売ってお金で分ける方法——を選ぶのが素直です。

登記の仕方は2つあります。どちらでも売れますが、手間と税務の扱いが変わります。

やり方登記売却手続き注意点
相続人全員の共有で登記全員の共有名義にする全員が契約書に署名押印し、全員が確定申告する手続きに全員の実印と印鑑証明が要る
代表者1人の名義で登記1人の名義にする代表者が契約し、あとで分配する協議書に換価分割である旨を明記しないと贈与とみなされる恐れ

代表者名義にする場合、遺産分割協議書に「換価分割のため便宜上◯◯名義とし、売却代金から諸費用を控除した残額を◯◯対◯◯の割合で分配する」といった趣旨をはっきり書いておいてください。書いていないと、分配したお金が贈与と扱われるリスクがあります。

名義が祖父のままだったとき#

実家の登記を取ってみたら、名義が亡くなった祖父のままだった。これは実際によくあります。この場合、祖父の相続と父の相続の両方を片づけないと売れません。

  • 祖父の相続人全員(叔父・叔母、その子)の同意が必要になります
  • 面識のない親族と連絡を取ることになり、時間も気疲れもかかります
  • 一人でも協力しない人がいると、調停・審判に進むことになります
  • 戸籍の収集範囲が一気に広がり、司法書士の費用も上がります

相続人に判断できない人がいるとき#

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。次の場合は、そのままでは協議が成立しません。

状況必要な手続き目安期間
認知症などで判断能力がない家庭裁判所で成年後見人を選任2〜4か月
未成年の相続人がいる特別代理人の選任(親も相続人の場合)1〜2か月
行方が分からない相続人がいる不在者財産管理人の選任、または失踪宣告数か月〜

成年後見人がついた場合、その人の法定相続分を下回る分割には原則として同意が得られません。「売って全額を長男に」といった分け方は難しくなります。

集めておく書類#

  • 亡くなった方の出生から死亡までの戸籍(相続人の確定に使います)
  • 相続人全員の戸籍謄本、住民票、印鑑証明書(発行から3か月以内を求められることがあります)
  • 遺産分割協議書(相続人全員の実印を押したもの)
  • 不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
  • 登記識別情報(権利証)、測量図、境界確認書
  • 亡くなった方が買ったときの売買契約書(取得費の証明に使います)

権利証が見つからない場合でも、司法書士による本人確認情報の作成などで売却は可能です。ただし別途費用がかかります。

書類の保管場所と、不動産の内容。この2つが分かるだけで、家族の手間は何か月分も変わります。

不動産と書類の情報を残す

まとめ#

  • 名義が亡くなった方のままでは売れません。相続登記が先です
  • 相続登記は3年以内の義務。相続人申告登記だけでは売却できません
  • 売って分けるなら換価分割。代表者名義にするなら協議書への明記を忘れずに
  • 名義が何代も飛んでいる、判断できない相続人がいる場合は、数か月余分に見込むこと
  • 特例には期限があります。動き出しの早さが、そのまま税額に効きます

よくある質問

Q. 相続登記をしないまま売ることはできますか?
できません。買主に所有権を移すには、いったん相続人の名義にする必要があります。売買契約と相続登記を同じ日に連続して行うことは実務上ありますが、登記そのものを飛ばすことはできません。
Q. 遺産分割がまとまらないまま3年が来そうです。
相続人申告登記をすれば、登記義務は果たしたことになり過料を避けられます。ただし名義が変わるわけではないので、売却するには改めて遺産分割と相続登記が必要です。
Q. 兄弟のうち一人が遠方です。全員が集まらないと売れませんか?
集まる必要はありません。遺産分割協議書は持ち回りで署名押印できますし、売買契約も代理人を立てる方法があります。ただし印鑑証明書と実印は各自で用意してもらう必要があります。
Q. 相続登記は自分でできますか?
簡単な事案なら自分で申請することも可能です。ただし数次相続や相続人が多い場合は、戸籍の収集だけでも大変です。売却の期限が絡むなら、司法書士に依頼したほうが確実です。

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  • 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い
  • 国土交通省不動産取引・土地の価格・空き家対策
  • 法務局相続登記・自筆証書遺言書保管制度

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。