相続した不動産の扱い

取得費が分からないとき|概算取得費5%を避けるために探すもの

先祖代々の土地や古い実家を売ると、買ったときの金額が分からないことがよくあります。その場合は売った金額の5%を取得費とみなす概算取得費が使われ、税額が大きく膨らみます。何を探せば実額を証明できるのか、見つからないときにどう考えるかを整理しました。

約4分で読めます・2026-09-10 公開

この記事の要点

  • 取得費が分からないときは、売った金額の5%を取得費とみなします。3,000万円で売れば取得費は150万円しか引けません。
  • 概算取得費が使われると、実際にはほとんど儲かっていなくても多額の税金がかかることがあります。まず資料を探すのが先です。
  • 売買契約書が第一候補ですが、通帳の振込記録、住宅ローンの金銭消費貸借契約書、登記簿の抵当権の金額なども手がかりになります。
  • 建物は買ったときの金額から減価償却費を差し引きます。土地は目減りしません。
  • 資料が本当に見つからないときは、市街地価格指数などから推計する方法が使われることがありますが、必ず認められるとは限りません。税理士に相談してください。

相続した実家や土地を売ろうとしたとき、いちばん多くの人がつまずくのが「買ったときの金額が分からない」という壁です。親が昭和のうちに買った土地、祖父の代から持っている畑。契約書が残っていないことは、めずらしくありません。

ここを放置すると、概算取得費という不利な計算が適用されます。金額の差は数百万円単位になることもあるので、売る前に一度、家じゅうを探す価値があります。

分からないと、売値の5%しか引けません#

取得費が不明な場合、売った金額の5%を取得費とみなして計算します。これを概算取得費といいます。3,000万円で売れたなら、取得費は150万円。残りはほぼすべて利益とみなされます。

前提取得費課税される譲渡所得税額の目安(長期)
契約書があり、2,000万円で買ったと分かる2,000万円約900万円約182万円
契約書がなく、概算取得費5%150万円約2,750万円約558万円

売却価額3,000万円、譲渡費用100万円、長期譲渡(税率20.315%)として計算した概算です。実際の税額は個別の事情で変わります。

同じ土地を同じ値段で売っても、書類が1枚あるかどうかで税額が3倍以上変わります。探さずにあきらめるのが、いちばんもったいない選択です。

まず探してほしい資料#

本命は売買契約書

当時の売買契約書が見つかれば、それが最も確実な証拠になります。仲介手数料の領収書、登記費用の領収書、不動産取得税の納税通知書も、取得費に加算できるので一緒に探してください。

  • 仏壇の引き出し、金庫、押し入れの古い書類箱
  • 登記済権利証(権利証)と一緒にまとめられた封筒
  • 確定申告の控え(住宅ローン控除を受けていた年の分)
  • 当時の通帳や振込の控え

契約書がなくても、手がかりは残っています

契約書そのものがなくても、支払った金額を示す資料があれば取得費として認められる可能性があります。次のようなものが手がかりになります。

資料分かること入手先
通帳の振込記録売主に支払った金額金融機関(保存期間に注意)
住宅ローンの金銭消費貸借契約書借入額から購入価額を推測金融機関
登記簿の抵当権設定額当時の借入額法務局(全部事項証明書)
分譲時のパンフレット・価格表同じ物件の販売価格自宅、分譲会社
売主だった不動産会社の記録取引価額当時の仲介会社・分譲会社

建物は、買った金額をそのまま引けるわけではありません#

土地は時間が経っても目減りしませんが、建物は使うほど価値が下がると考えます。そのため、買ったときの建物価額から減価償却費を差し引いた金額が取得費になります。

  • 土地の取得費 = 買ったときの土地の金額(そのまま)
  • 建物の取得費 = 買ったときの建物の金額 − 減価償却費相当額
  • 古い木造家屋は、ほとんど価値が残っていない計算になることもあります

契約書に土地と建物の内訳が書かれていない場合は、消費税額から建物価額を逆算する方法や、固定資産税評価額の比率で按分する方法が使われます。ここは判断が分かれやすいところなので、税理士に確認してください。

どうしても見つからないとき#

資料が本当に残っていない場合、市街地価格指数などの統計から当時の価額を推計し、それを取得費として申告する方法が実務上とられることがあります。ただし、これは法令に定められた計算方法ではありません。

  • 必ず認められるとは限りません。税務署に否認された事例もあります
  • 購入時期が分かっていること、市街地の宅地であることなど、前提条件があります
  • 使うなら、根拠資料をそろえたうえで税理士に依頼するのが安全です

一方で、概算取得費5%を使えば計算は確実に通ります。推計にかかる手間・リスクと、減る税額を天秤にかけるという判断になります。

親が元気なうちにできること#

この問題は、相続が起きる前なら簡単に解決できます。親に「この家の売買契約書はどこにありますか」と一度聞いておくだけです。エンディングノートの財産の欄に、書類の保管場所を書いてもらえれば、それで足ります。

「ななえの手帖」の不動産の欄には、権利証や売買契約書の保管場所を書く項目があります。金額そのものより、まず場所を残してください。

不動産の情報を書き残す

取得費が確定したら、次は税額の計算です。譲渡所得の計算と税率で、実際の計算の流れを確認してください。相続税を払っている場合は取得費加算の特例も使える可能性があります。

よくある質問

Q. 売買契約書が見つかりません。もう5%しか引けませんか?
そうとは限りません。通帳の振込記録、住宅ローンの契約書、登記簿の抵当権設定額など、支払った金額を示す資料があれば取得費として認められる可能性があります。まずは金融機関と法務局に当たってみてください。
Q. 相続した土地の取得費は、相続したときの評価額ではないのですか?
違います。相続の場合は、亡くなった方が買ったときの金額をそのまま引き継ぎます。相続税の計算で使った評価額とは別物なので、混同しないよう注意してください。
Q. 市街地価格指数で計算した金額は、税務署に認められますか?
認められた例も、否認された例もあります。法令上の計算方法ではないため、確実とは言えません。使う場合は根拠資料をそろえ、税理士と相談したうえで申告してください。
Q. 土地と建物をまとめて買っていて、内訳が分かりません。
契約書に消費税額の記載があれば、そこから建物価額を逆算できます。記載がない場合は、購入時の固定資産税評価額の比率で按分する方法などが使われます。

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  • 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い
  • 国土交通省不動産取引・土地の価格・空き家対策
  • 法務局相続登記・自筆証書遺言書保管制度

記事に出てくる言葉の意味は用語集にまとめています

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。