不動産の分け方4つ|現物・代償・換価・共有の選び方
不動産は分けにくい財産です。現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つの方法について、向いている場面、税金の扱い、遺産分割協議書での書き方を比較しました。代償金の決め方と、換価分割で気をつける譲渡所得税まで解説します。
約5分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- 不動産の分け方は、現物分割・代償分割・換価分割・共有の4つです。
- 代償分割は1人が不動産を取得して他の相続人に金銭を払う方法で、路線価ベースで評価すると時価の8割程度になり、取得する側に有利になります。
- 換価分割は売ってお金で分ける方法で、金額で公平に分けられる一方、譲渡所得税がかかることがあります。
- 共有はその場は収まりますが、売却や建て替えに共有者全員の同意が必要になり、次の相続で共有者が増えます。
- 相続税の申告期限(10か月)までに分割が決まらない場合は、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。
相続で揉めるのは、財産が多いご家庭ではなく分けにくいご家庭です。そして不動産は、最も分けにくい財産です。
「自宅3,000万円と預金500万円、子が2人」。この配分をどうするか。方法は4つあり、それぞれ向き不向きと税金の扱いが違います。
4つの方法#
| 方法 | 内容 | 公平性 | 実行のしやすさ |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 土地を分筆して物理的に分ける | △(価値に差が出る) | △(面積が必要) |
| 代償分割 | 1人が取得し、他に金銭を払う | ○ | △(代償金の用意) |
| 換価分割 | 売って現金を分ける | ◎ | ○(売れれば) |
| 共有 | 持分で共有する | ◎(帳簿上は) | ×(先送り) |
① 現物分割#
土地を分筆して、それぞれが取得します。
向いている場面
- 土地が広い(分けても各区画が使える)
- 接道条件が確保できる(分けた両方が道路に接する)
- 複数の不動産があり、1件ずつ分けられる
注意点
- 分筆には測量と登記の費用がかかります
- 形と接道で価値が変わります。角地と旗竿地では、同じ面積でも価格が違います
- 最低敷地面積の規制がある地域では、分けられないことがあります
- 建物は分けられません。建物がある場合、この方法は使いにくい
② 代償分割#
1人が不動産を取得し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う方法です。実家を継ぐ子がいる場合の定番です。
向いている場面
- 同居している子が自宅を継ぐ
- 事業用不動産を後継者に集約したい
- 分けたら価値が下がる(分筆すると使いにくくなる)
代償金をいくらにするか
ここが最大の論点です。何を基準にするかで金額が大きく変わります。
| 基準 | 特徴 |
|---|---|
| 時価(実勢価格) | 実際に売れる金額。最も公平だが、査定に幅が出る |
| 相続税評価額 | 路線価ベース。時価の8割程度になり、取得する側に有利 |
| 固定資産税評価額 | さらに低くなる。取得する側にかなり有利 |
| 不動産鑑定評価額 | 費用はかかるが、最も争いになりにくい |
| 実際の売却価格 | 売らないので使えない |
どれを使うかは相続人の合意次第です。ただし、相続税の申告では相続税評価額を使うため、代償金を時価ベースで決めた場合、課税価格の調整計算が必要になります。
協議書での書き方
代償金の原資をどうするか
「払えないから代償分割ができない」というのは、非常によくある壁です。
- 生命保険 — 継ぐ子を受取人にしておけば、遺産分割を待たずに受け取れます。最も噛み合う方法です
- 自己資金
- 分割払い — 協議書で期限と方法を明記します
- 不動産を担保に借りる — 現実的ですが、返済負担が残ります
生前に対策するなら、生命保険での準備が最も確実です(生命保険と相続税)。
③ 換価分割#
売却して、代金を分けます。誰も住まない実家の場合、最も現実的な選択です。
利点と注意点
| 利点 | 注意点 |
|---|---|
| 公平に分けられる | 譲渡所得税がかかる |
| 維持費の負担がなくなる | 売れるまで手続きが終わらない |
| 現金なので分けやすい | 相続税の申告期限(10か月)に間に合わないことがある |
| 小規模宅地等の特例が使えなくなる場合がある |
一時的に代表者名義にする場合
売却手続きのために、いったん1人の名義にすることがあります。この場合、
- 遺産分割協議書に「換価のために便宜上取得する」旨を明記する
- 売却代金の分配割合も書いておく
- これがないと、分配が贈与とみなされるおそれがあります
譲渡所得税は各自が申告
売却益が出れば、各相続人がそれぞれ確定申告します。
一定の要件を満たせば空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例が使えます。相続人が3人以上の場合、空き家控除は1人あたり2,000万円が上限です。
④ 共有#
持分で共有する方法です。帳簿上は最も公平ですが、実務では最も避けたい選択です。
売却も建替えも全員の同意が必要になり、次の代では共有者が倍に増えます。詳しくは共有名義の不動産をご覧ください。
例外的に共有が合理的な場合
- 近いうちに売ることが全員で決まっており、換価分割の前段階として一時的に共有する
- 賃貸物件で収益を分け合うことに全員が納得しており、管理者も決まっている
- 配偶者と子1人など、共有者が少なく次の相続でも整理しやすい
いずれも「いつ解消するか」を決めておくことが前提です。
選び方の順番#
- 誰か住む人がいるか — いれば代償分割、いなければ換価分割
- 代償金を用意できるか — できなければ換価分割へ
- 分けても価値が落ちないほど広いか — 広ければ現物分割も選択肢
- 特例(小規模宅地等)を使うか — 使うなら、取得者と売却時期を調整
- 共有は最後の手段。選ぶなら解消時期を決めておく
そして、いずれの場合もまず査定を取ってください。金額が分からないまま議論しても、話はまとまりません。
不動産の評価額と家族構成が分かれば、相続税の目安をその場で計算できます。無料・登録不要です。
相続税の概算を計算するまとめ#
- 方法は現物・代償・換価・共有の4つ
- 代償金の基準(時価か相続税評価額か)で金額が大きく変わる
- 協議書には「代償として」「換価のために便宜上」を明記
- 換価分割は譲渡所得税と小規模宅地等の特例との関係に注意
- 共有は最後の手段。選ぶなら解消時期を決める
- まず査定を取る。数字がないと話は進まない
よくある質問
- Q. 代償金は分割払いにできますか?
- できます。遺産分割協議書に支払期限と支払方法を明記してください。ただし長期の分割にすると、途中で支払いが滞ったときに回収が難しくなります。公正証書にして強制執行認諾文言を入れておく方法もあります。
- Q. 代償金を不動産で払ってもいいですか?
- 可能ですが、代償として自分の他の財産を渡すと、その財産を時価で譲渡したものとして譲渡所得税がかかります。金銭で支払うほうが税務上は単純です。
- Q. 換価分割と共有のまま売るのは、どちらがよいですか?
- 結果は似ていますが、換価分割は遺産分割として代表者が売却手続きを進められるため、実務上スムーズです。共有のまま売る場合は、全員が契約と決済に関与する必要があります。遠方の相続人がいるなら、換価分割で代表者を決め、協議書に「換価のために便宜上取得する」旨を書いておくほうが動きやすくなります。
- Q. 相続税の申告期限までに売れそうにありません。
- 申告期限は延びないので、いったん法定相続分または合意した内容で申告します。分割が確定していない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付してください。なお、空き家の3,000万円特別控除は相続開始から3年経過する年の12月31日までが期限なので、そちらの逆算も必要です。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。