空き家の3,000万円特別控除|要件を一つずつ確認する
相続した空き家を売るとき、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。昭和56年5月31日以前の建築、被相続人が一人で住んでいたこと、売却価額1億円以下、相続から3年目の年末までなど、要件は細かく決まっています。一つずつ順に確認できるように整理しました。
約4分で読めます・2026-09-10 公開
この記事の要点
- 相続した空き家を売った利益から、最大3,000万円を差し引ける特例です。要件を満たせば税額がゼロになることもあります。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた家屋で、区分所有建物でないこと。分譲マンションは対象外です。
- 亡くなった方が一人で住んでいたことが前提です。同居していた家族がいると使えません。
- 売却価額が1億円以下であること、相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ることが必要です。
- 相続人が3人以上いる場合、一人あたりの控除額は2,000万円に下がります。取得費加算の特例とは選択適用で、併用できません。
相続した実家が空き家のままになっている。売りたいけれど、税金が心配で踏み切れない。そういうときに検討したいのが、被相続人の居住用家屋を売ったときの3,000万円特別控除、通称「空き家の特例」です。
譲渡所得から最大3,000万円を差し引けるので、多くのケースで税額がゼロになります。ただし要件がとても細かい特例です。ここでは、順番に確認していきます。
どれくらい変わるのか#
| 前提 | 課税される譲渡所得 | 税額の目安 |
|---|---|---|
| 特例を使わない | 約2,750万円 | 約558万円 |
| 特例を使う(3,000万円控除) | 0円 | 0円 |
売却価額3,000万円、概算取得費150万円、譲渡費用100万円、長期譲渡(税率20.315%)として計算した概算です。
差は数百万円になります。要件の確認に手間をかける価値は、十分にあります。
要件を一つずつ#
1. 家屋そのものの要件
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと(旧耐震基準の建物であること)
- 区分所有建物の登記がされていないこと。分譲マンションは対象外です
- 相続開始の直前に、亡くなった方が住んでいたこと
2. 亡くなった方の住み方の要件
相続開始の直前に、亡くなった方が一人で住んでいたことが必要です。配偶者や子と同居していた場合は使えません。これは「相続によって空き家になった家」を減らすための特例だからです。
3. 売るまでの使い方の要件
相続してから売るまでの間、その家を事業用・貸付用・居住用に使っていないことが必要です。空き家のまま置いておくのが前提の特例なので、途中で人に貸すと使えなくなります。
- 誰かに貸した
- 相続人が住み始めた
- 駐車場として利用した
上のいずれかに当てはまると、原則として対象外になります。売却を考えているなら、暫定的な活用にも注意してください。
4. 売り方の要件
売るときは、次のどちらかの形にする必要があります。そのまま売ってはいけないというのが、この特例のいちばん引っかかりやすいところです。
| 方法 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 耐震リフォームして売る | 現行の耐震基準に適合させたうえで譲渡する | 耐震基準適合証明書などが必要 |
| 取り壊して土地を売る | 家屋を除却し、更地にして譲渡する | 解体費用がかかる。翌年の固定資産税に注意 |
| 買主が引き渡し後に工事する | 譲渡の翌年2月15日までに買主が耐震改修または取壊しを行う | 契約で確実に取り決めておくこと |
5. 金額と期限の要件
- 売却価額が1億円以下であること(共有で分けて売った場合は合計で判定します)
- 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 特例の適用期限そのものが定められているので、最新の期限を確認すること
期限の数え方は要注意です。たとえば2026年5月に亡くなった場合、3年を経過する日は2029年5月。その日の属する年の年末、つまり2029年12月31日までに売却を完了させる必要があります。
相続人が3人以上いると、控除額が下がります#
この家屋を相続した人が3人以上いる場合、一人あたりの控除額は3,000万円ではなく2,000万円になります。共有で相続してから売る場合は、この点も踏まえて分け方を考えてください。
取得費加算の特例とは、どちらか一方#
相続税を払っている場合に使える取得費加算の特例とは、選択適用です。両方は使えませんので、どちらが有利かを計算して選びます。
- 相続税をあまり払っていない、または払っていない → 空き家の特例が有利なことが多い
- 多額の相続税を払っている → 取得費加算のほうが有利になることもある
- 迷ったら、両方で計算して比べるのが確実です
手続きで必要になるもの#
確定申告のときに、市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」が必要です。これは物件のある市区町村に申請して取得します。発行までに時間がかかることがあるので、売却が決まったら早めに動いてください。
- 被相続人居住用家屋等確認書(市区町村で取得)
- 売買契約書の写し
- 登記事項証明書
- 耐震基準適合証明書(耐震リフォームして売った場合)
空き家をどう扱うか迷っているなら、まず現状を書き出すところから。「ななえの手帖」の不動産の欄に、住所・名義・築年・現在の使い方を記録できます。
実家の情報を書き残す売るか、残すか、活用するかを含めて考えたい場合は相続した空き家をどうするかを、税額の計算そのものは譲渡所得の計算と税率をご覧ください。
よくある質問
- Q. 分譲マンションでも使えますか?
- 使えません。区分所有建物の登記がされている建物は対象外とされています。この特例は一戸建ての空き家を想定した制度です。
- Q. 亡くなった父と母が二人で住んでいた家です。母が亡くなったあとなら使えますか?
- 母が亡くなった時点で母が一人で住んでいたのであれば、そのときの相続で要件を満たす可能性があります。父の相続のときは同居者がいたため使えません。個別の事情で判断が変わるので、税理士に確認してください。
- Q. 解体してから売るのと、買主に解体してもらうのとでは、どちらが有利ですか?
- 解体費用の負担と、更地にしたあとの固定資産税の増加を天秤にかけます。買主が引き渡し後に取り壊す形でも、譲渡の翌年2月15日までに工事が完了すれば対象になります。契約書に明記しておくことが大切です。
- Q. 兄弟3人で相続した家を売りました。控除はいくらですか?
- 相続人が3人以上の場合、一人あたりの控除額は2,000万円になります。3人それぞれが要件を満たせば、合計で6,000万円を控除できる計算です。
- Q. 売却価額が1億円を少し超えました。超えた分だけ対象外になりますか?
- いいえ、1億円を超えると特例そのものが使えなくなります。共有物件を分けて売った場合も合計額で判定するので、価格設定の段階で意識しておく必要があります。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。