相続した不動産の扱い

売却前の測量と境界確定|必要になる場面と費用の目安

相続した土地を売るとき、境界がはっきりしていないと話が進まないことがあります。確定測量が必要になるのはどんな場面か、費用と期間はどれくらいか、隣地との立会いが取れないときや越境が見つかったときにどうするかを整理しました。

約5分で読めます・2026-09-10 公開

この記事の要点

  • 土地の売買では、境界がはっきりしていることを求められるのが一般的です。相続した古い土地では境界標がないことがよくあります。
  • 確定測量は隣地所有者の立会いと署名が必要なため、費用は数十万円、期間は3か月前後かかります。
  • 道路や水路に接している土地は行政との立会いも必要になり、期間も費用も上振れします。
  • ブロック塀や樹木の越境が見つかったら、覚書を交わして将来の建て替え時に解消する取り決めをするのが一般的です。
  • 測量は相続登記の前でも進められます。売却の期限が迫っているなら、遺産分割と並行して動かすと時間を稼げます。

相続した土地を売りに出したら、不動産会社から「確定測量図はありますか」と聞かれた。そんなものは見たことがない——実家の土地では、ごく普通に起きることです。

境界がはっきりしていない土地は、売却が止まります。何が必要で、どれくらいかかるのかを先に知っておくと、慌てずに済みます。

なぜ境界が問題になるのか#

買主にとって、土地の広さと形は価格そのものです。あとから「ここはうちの土地だ」と隣から言われたら、買った意味がなくなります。だから買主は、境界が確定していることを求めます。

  • 登記簿の面積(公簿面積)は、実際の面積と一致しないことがあります
  • 古い測量は精度が低く、縄伸び・縄縮みと呼ばれるずれが残っています
  • 境界標(杭やプレート)が抜けている、埋まっている土地は多くあります
  • 隣地ともめている土地は、売却価格が大きく下がります

2つの売り方#

方式内容使われる場面
公簿売買登記簿の面積で取引し、実測との差があっても精算しない面積が大きい山林・農地など、単価が低い土地
実測売買実測面積で取引し、差があれば代金を精算する住宅地など、単価が高い土地

市街地の宅地は実測売買が基本で、その前提として確定測量を求められることが多くなります。

測量図の3つの種類#

「測量図」と一口に言っても中身が違います。売却で求められるのは、原則としていちばん下の確定測量図です。

種類内容売却で使えるか
現況測量図ブロック塀など現状の構造物をもとに測っただけのもの参考程度。隣地の同意がありません
地積測量図法務局に備え付けられた図面古いものは精度が低く、そのままでは足りないことがあります
確定測量図隣地所有者全員の立会いと署名で境界を確定させたものこれが求められます

費用と期間の目安#

内容費用の目安期間の目安
現況測量のみ10万〜20万円程度2週間〜1か月
確定測量(隣地が個人のみ)35万〜50万円程度2〜3か月
確定測量(道路・水路に接する)60万〜100万円程度3〜6か月
分筆登記(分ける場合)上記に加えて数万〜十数万円測量後2週間程度

土地の広さ、隣地の数、地域によって大きく変わります。必ず複数の土地家屋調査士から見積もりを取ってください。

期間が読みにくいのは、隣の人の都合に左右されるからです。立会いの日程調整、行政の窓口の手続き、いずれもこちらの努力だけでは短縮できません。

道路や水路に接していると、長くなります#

土地が公道や水路に接している場合、官民境界の確定が必要になります。市町村や国との立会いになるため、申請から確定まで数か月かかることも珍しくありません。

  • 役所の担当部署に申請し、順番を待つ必要があります
  • 過去に官民境界が確定済みなら、その資料を使えて期間が短くなります
  • 里道・水路が土地の中を通っている場合は、払い下げの手続きが必要になることもあります

隣地の立会いが取れないとき#

隣が空き家で連絡が取れない、相続で名義が変わっていない、感情的な経緯があって応じてもらえない。こうした場合の選択肢です。

方法内容目安
筆界特定制度法務局の筆界特定登記官が境界を判断する行政手続き半年〜1年程度
境界確定訴訟裁判所に境界を決めてもらう1年以上、費用も大きい
一部未確定のまま売る確定できた範囲だけの図面で売却する価格が下がる、買主が限られる

相続した土地で、しかも自分は遠方に住んでいる。そういう状況では、時間をかけるより価格で折り合うという判断も現実的です。

越境が見つかったら#

測量すると、越境——ブロック塀、屋根の庇、雨樋、樹木の枝が敷地をまたいでいる状態——が見つかることがよくあります。

  • すぐに撤去を求めるのではなく、越境の覚書を交わすのが一般的です
  • 「建て替えのときに解消する」という将来の取り決めを書面にします
  • 買主に引き継がれる内容にしておくことが大切です
  • 放置したまま売ると、契約不適合として責任を問われるおそれがあります

測量は、相続登記を待たずに始められます#

売るまでの段取りのとおり、売却には相続登記が必要です。ただし測量そのものは、遺産分割や登記と並行して進められます。

  • 相続人の一人が窓口になって、土地家屋調査士に依頼できます
  • 費用の負担割合は、あらかじめ相続人間で決めておいてください
  • 取得費加算や空き家の特例の期限が近いなら、並行して動かすことで数か月稼げます

なお、測量費用は売却のために支出したものであれば、譲渡費用として譲渡所得の計算で差し引けます。領収書は必ず保管してください。

確定測量図や境界確認書がどこにあるか、家族は知っていますか。あるかないかが分かるだけで、数十万円と数か月が変わります。

不動産の書類の場所を残す

まとめ#

  • 市街地の宅地を売るなら、確定測量図を求められると考えておく
  • まず法務局と自宅を探す。既存の図面があれば大きな節約になります
  • 費用は数十万円、期間は3か月前後。道路に接していればさらに長くなります
  • 越境は隠さず、覚書で将来の解消を取り決める
  • 測量は相続登記を待たずに始められます。期限がある特例を使うなら並行で

よくある質問

Q. 測量は必ずしなければいけませんか?
法律上の義務ではありません。公簿売買であれば測量なしで売ることも可能です。ただし市街地の宅地では買主から確定測量を求められるのが一般的で、応じられないと価格に響きます。
Q. 測量費用は売主と買主のどちらが負担しますか?
確定測量を条件とする売買では、売主負担とするのが一般的です。契約前に取り決めるので、仲介会社を通じて確認してください。
Q. 隣の家が空き家で、所有者と連絡が取れません。
登記事項証明書から所有者を調べ、住民票の除票などをたどるのが最初の手です。それでも判明しない場合は、筆界特定制度を使うか、一部未確定のまま売ることを検討します。時間との兼ね合いで判断してください。
Q. 測量したら登記簿より面積が広いことが分かりました。相続税は増えますか?
相続税の申告後に実測で面積が増えた場合、評価額が上がって修正申告が必要になることがあります。申告前であれば、実測の結果を反映して申告します。税理士に相談してください。
Q. 土地家屋調査士と測量士は違うのですか?
違います。境界を確定させて登記につなげる業務は土地家屋調査士の仕事です。売却のための確定測量を頼むなら、土地家屋調査士に依頼してください。

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  • 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い
  • 国土交通省不動産取引・土地の価格・空き家対策
  • 法務局相続登記・自筆証書遺言書保管制度

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。