相続した不動産を売ったときの税金|譲渡所得の計算と税率
相続した土地や建物を売ると、利益に対して譲渡所得税がかかります。取得費と譲渡費用に何が入るか、所有期間で税率が2倍近く変わること、そして相続の場合は亡くなった方の取得日と取得費を引き継ぐことまで、計算例つきで解説します。
約5分で読めます・2026-09-10 公開
この記事の要点
- 譲渡所得は「売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除」で計算します。売った金額そのものに課税されるわけではありません。
- 税率は所有期間で変わります。5年超の長期なら20.315%、5年以下の短期なら39.63%と、2倍近い差があります。
- 所有期間は売った年の1月1日時点で判定します。売買契約の日ではありません。
- 相続で取得した場合、亡くなった方の取得日と取得費をそのまま引き継ぎます。相続してすぐ売っても、親が長く持っていれば長期の税率になります。
- 売った翌年の2月16日から3月15日までに確定申告します。税額がゼロでも、特例を使うなら申告が必要です。
相続した実家や土地を売ると、利益に対して税金がかかります。よくある誤解が「売った金額に税金がかかる」というもので、実際にはもうけの部分だけが対象です。
そして相続の場合、亡くなった方が買ったときの値段と日付をそのまま引き継ぐという決まりがあります。ここを知らないと、税額の見当が大きく外れます。
計算のしかた#
「売った金額」は消費税を含む総額です。この式でマイナスになれば、譲渡所得はゼロで税金はかかりません。
取得費に入るもの
買ったときにかかったお金です。建物は使ったぶん値打ちが減るので、減価償却費相当額を差し引きます。土地は減りません。
- 購入代金(土地と建物を分けて把握する)
- 購入時の仲介手数料
- 購入時の印紙代・登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬
- 造成費用、測量費、擁壁工事の費用
- 購入時に支払った立退料
- 建物の増改築費用(資本的支出にあたるもの)
譲渡費用に入るもの
売るために直接かかったお金だけです。売った後の費用や、持っている間の費用は入りません。
| 入るもの | 入らないもの |
|---|---|
| 売却時の仲介手数料 | 固定資産税・都市計画税 |
| 売買契約書の印紙代 | 修繕費・管理費 |
| 建物の取壊し費用(土地を売るために壊した場合) | 引っ越し代 |
| 賃借人に支払った立退料 | 遺産分割にかかった費用 |
| 売るために行った測量費 | 相続登記の費用(原則) |
| より高く売るために契約を解除した違約金 | 抵当権抹消の費用 |
相続登記の費用は、原則として取得費にも譲渡費用にもなりません。ただし、売るために必要だった場合の扱いは事案によるため、税理士にご確認ください。
税率は所有期間で決まります#
| 所有期間 | 区分 | 税率 |
|---|---|---|
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%) |
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%) |
復興特別所得税は2037年分までの上乗せです。
相続なら、亡くなった方の分を引き継ぎます#
ここが相続特有の、そして最も大事な点です。相続や遺贈で取得した不動産は、亡くなった方の取得日と取得費をそのまま引き継ぎます。
- 取得日を引き継ぐ → 親が30年前に買った家なら、相続した翌月に売っても長期(20.315%)
- 取得費を引き継ぐ → 親が買ったときの契約書が必要になる。相続開始時の時価ではありません
- 相続税を払ったこと自体は取得費になりません(ただし取得費加算の特例があります)
相続した不動産が短期になることは、ほとんどありません。一方で、親の購入時の資料が要るという宿題が残ります。実家の片づけのときに、売買契約書だけは必ず探してください。
計算例#
父が40年前に買った実家(土地・建物)を、相続して3,500万円で売った場合。
| 項目 | 金額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 売った金額 | 3,500万円 | |
| 取得費 | △800万円 | 父の購入代金(建物は減価償却後) |
| 譲渡費用 | △170万円 | 仲介手数料116万円+解体費用50万円+印紙代など |
| 譲渡所得 | 2,530万円 | 3,500 −(800+170) |
| 税額 | 約514万円 | 2,530万円 × 20.315% |
空き家の3,000万円特別控除などが使えれば、この譲渡所得から差し引けます。要件を満たせば税額がゼロになることもあります。
もし父の購入時の資料がなく概算取得費(5%=175万円)になると、譲渡所得は3,155万円、税額は約641万円。資料の有無で130万円ほど違います。
税額を下げられる特例#
相続した不動産の売却で使える主なものは、次の2つです。どちらか一方しか使えません(選択適用)。
| 特例 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|
| 空き家の3,000万円特別控除 | 譲渡所得から最高3,000万円を控除 | 相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで |
| 取得費加算の特例 | 払った相続税の一部を取得費に加算 | 相続税の申告期限の翌日から3年(相続開始から3年10か月)まで |
相続税を払っていない場合、取得費加算は使えません。空き家の控除のほうが金額は大きくなりがちですが、要件が細かいので早めに確認してください。
売却の段取りと必要書類は相続した不動産を売るまでの段取りに、相続時と売却時の税金の全体像は実家を相続したときの税金にまとめています。
確定申告#
- 売った翌年の2月16日から3月15日までに申告します
- 特例を使うなら、税額がゼロでも申告が必要です
- 必要な書類は、売買契約書の写し(購入時と売却時)、仲介手数料などの領収書、登記事項証明書
- 譲渡所得は他の所得と分けて計算します(分離課税)
- 住民税は、翌年度の納付書または給与からの天引きで納めます
相続税がかかるかどうかは、財産の総額と家族構成から概算できます。登録不要・無料です。
相続税の目安を計算するまとめ#
- 課税されるのは売値ではなく、もうけの部分だけ
- 税率は長期20.315%/短期39.63%。判定は売った年の1月1日時点
- 相続なら亡くなった方の取得日と取得費を引き継ぐ。ほとんどの場合は長期になる
- 購入時の契約書がないと、取得費は売値の5%。片づけのときに必ず探す
- 空き家の3,000万円控除と取得費加算はどちらか一方。期限が違うので早めに判断する
よくある質問
- Q. 売って損が出た場合、税金はかかりませんか?
- かかりません。譲渡所得がマイナスなら課税されません。ただし、居住用財産でない不動産の譲渡損失は、給与所得など他の所得と損益通算できないのが原則です。相続した空き家の売却損は、通常は他の所得と相殺できません。
- Q. 兄弟3人で相続した実家を売りました。誰がいくら申告しますか?
- 持分に応じて、それぞれが自分の譲渡所得を計算して申告します。売却代金も取得費も譲渡費用も、持分割合で按分します。空き家の3,000万円特別控除も各人が判定しますが、取得した相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円が上限になります。
- Q. 建物を壊してから土地を売りました。解体費用は引けますか?
- 土地を売るために建物を取り壊した場合、その取壊し費用と建物の未償却残高は譲渡費用として引けます。ただし、取り壊してから売却までに時間が空き、その間に駐車場などとして使っていた場合は、認められないことがあります。
- Q. 相続してから何年以内に売らないといけませんか?
- 期限そのものはありません。ただし特例には期限があります。空き家の3,000万円特別控除は相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、取得費加算の特例は相続税の申告期限の翌日から3年までです。この2つを使うつもりなら、逆算して動いてください。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。