おひとりさまの終活|身元保証・死後事務・財産の行き先を決めておく
身寄りがない、または家族に頼れない場合の終活をまとめました。入院や施設入居で求められる身元保証、死後事務委任契約、判断能力が落ちたときの任意後見、そして相続人がいないと財産が国庫に入ることと、その前にできる遺言・遺贈寄付まで解説します。
約5分で読めます・2026-09-06 公開
この記事の要点
- おひとりさまの備えは、生きている間の身元保証、判断能力が落ちたときの後見、亡くなった後の死後事務、財産の行き先の4つに分かれます。
- 入院や施設入居では身元保証人を求められることが多く、身寄りがない場合は身元保証を行う事業者や成年後見人が受け皿になります。
- 葬儀・納骨・住まいの片づけ・各種の解約は、死後事務委任契約で生前に第三者へ頼んでおけます。
- 相続人がいないまま亡くなると、財産は最終的に国庫に入ります。特別縁故者への分与を求める道はありますが、家庭裁判所への申立てが必要です。
- 特定の人や団体に財産を渡したい場合は、遺言書が必要です。遺言があれば相続人以外にも遺贈できます。
配偶者や子がいない、きょうだいとは疎遠、頼れる親族が遠方にしかいない。こうした状況で必要になる備えは、家族がいる場合とは組み立てが変わります。
誰かが自動的にやってくれることは、ほとんどありません。逆に言えば、生前に決めて契約しておけば、たいていのことは手当てできます。この記事では、4つの場面に分けて整理します。
| 場面 | 困ること | 備え |
|---|---|---|
| 入院・施設入居 | 身元保証人を求められる | 身元保証サービス、任意後見 |
| 判断能力が落ちたとき | 預金が凍結され、契約もできない | 任意後見、家族信託、代理人サービス |
| 亡くなった直後 | 葬儀・納骨・解約をする人がいない | 死後事務委任契約 |
| 財産の行き先 | 相続人がいないと国庫に入る | 遺言書、遺贈寄付 |
① 入院・施設入居の身元保証#
病院や介護施設では、入院・入居のときに身元保証人を求められることが少なくありません。求められる役割は、緊急時の連絡先、費用の支払いの保証、退院や退去のときの引き取り、亡くなった後の遺体の引き取りなど、施設によって幅があります。
身寄りがない場合の受け皿は、主に次の3つです。
- 身元保証を行う事業者との契約 — 民間のサービス。費用は数十万円から百万円台まで幅があります
- 成年後見人・任意後見人 — 財産管理や契約の代理を担います。ただし身元保証人そのものにはなれないとされています
- 施設との個別の相談 — 保証人なしでも受け入れる方針の施設が増えています。まず相談してみる価値があります
② 判断能力が落ちたときの備え#
家族がいれば、多少の融通が利く場面もありますが、おひとりさまの場合はそうはいきません。認知症などで判断能力が低下すると、預金は凍結され、施設の契約もできなくなります。
判断能力があるうちにしかできないのが任意後見です。将来支援してもらう人と内容を、公正証書で契約しておきます。頼める親族がいない場合、司法書士・弁護士・社会福祉士といった専門職や、法人と契約する形になります。
| 制度 | 始められる時期 | 特徴 |
|---|---|---|
| 任意後見 | 判断能力があるうち | 支援する人と内容を自分で決められる。公正証書で契約 |
| 法定後見 | 判断能力が低下した後 | 家庭裁判所が後見人を選ぶ。誰になるかは選べない |
| 家族信託 | 判断能力があるうち | 財産の管理に強いが、身上監護はできない。受託者を頼める人が必要 |
任意後見と併せて、判断能力があるうちの見守り契約や財産管理委任契約を結んでおくと、切れ目のない支援になります。
制度の違いは家族信託・成年後見・遺言の使い分けで詳しく比較しています。
③ 亡くなった後の事務#
葬儀の手配、火葬と納骨、住まいの片づけ、賃貸の解約、公共料金やサブスクの解約、行政への届出。これらは誰かが動かないと止まりません。
死後事務委任契約は、これらを生前に第三者へ委任しておく契約です。司法書士・弁護士・行政書士や、民間の事業者と結びます。
- 契約に入れる内容 — 葬儀と納骨の方法、住まいの片づけ、契約の解約、関係者への連絡、遺品の処分
- 費用の手当て — 実費を前払いで預ける、生命保険の受取人にする、遺言で支払いを指定する、といった方法があります
- 遺言書との併用 — 死後事務委任は「やること」、遺言は「財産の行き先」。役割が違うので両方必要です
④ 財産の行き先を決める#
相続人が1人もいないまま亡くなると、財産は次の順で扱われます。
- 家庭裁判所が相続財産清算人を選任する(誰かが申し立てた場合)
- 債権者への支払いと、特別縁故者への分与の申立てを受け付ける
- 残った財産は、最終的に国庫に入ります
長年世話をしてくれた人がいる場合、その人は特別縁故者として財産の分与を申し立てられます。ただし家庭裁判所への申立てが必要で、認められるとは限りません。確実に渡したいなら、遺言書を書いてください。
遺言書で渡す
遺言があれば、相続人以外の人や法人にも財産を渡せます(遺贈)。お世話になった人、内縁のパートナー、地域の団体、母校、NPO。渡したい先を自分で決められます。
- 方式 — 確実を期すなら公正証書遺言。証人2人が必要ですが、公証役場で手配してもらえることもあります
- 遺言執行者を必ず指定する — 遺言の内容を実現する人。おひとりさまの場合は特に重要です
- 不動産の遺贈は事前に相談を — 受け取る側が管理できないと、断られることがあります
遺贈寄付を考える場合は、寄付先が不動産や有価証券を受け取れるかを事前に確認してください。現金化してから渡す形(清算型遺贈)にするなら、その手順も遺言に書いておきます。
「ななえの手帖」には、財産のありか・医療や介護の希望・葬儀の希望・連絡先を書く欄があります。契約を検討する前の整理としてお使いいただけます。
まず現状を書き出す進める順番#
- 法定相続人がいるかを確認する — 戸籍で確認。いるかどうかで打ち手が変わります
- 財産と契約を書き出す — エンディングノートで十分です
- 医療・介護の希望を書く — 代わりに決めてくれる家族がいない分、より重要です
- 専門職に相談する — 任意後見・死後事務委任・遺言はセットで設計するのが効率的です
- 費用の手当てを決める — 契約は結んでも、支払いの原資がないと実行されません
相談先が分からない場合は、お住まいの地域包括支援センター、市区町村の高齢福祉の窓口、社会福祉協議会が入口になります。地域によっては、自治体が死後事務の支援を行っていることもあります。
よくある質問
- Q. 身寄りがなくても、亡くなれば行政が対応してくれるのではないですか?
- 引き取り手がない場合、市区町村が火葬や埋葬を行う仕組みはあります。ただし、それは最低限の対応で、葬儀の希望や納骨先が反映されるわけではありません。住まいの片づけや契約の解約も進みません。希望があるなら、生前に契約しておく必要があります。
- Q. 死後事務委任契約は、いくらくらいかかりますか?
- 契約に入れる内容によって大きく変わります。報酬とは別に、葬儀費用や片づけの実費が必要です。見積りを取るときは、報酬と実費を分けて示してもらい、実費をどう用意しておくか(預託金、保険金、遺言での指定)まで確認してください。
- Q. 内縁のパートナーに財産を残せますか?
- 遺言書があれば残せます。内縁の相手は法定相続人ではないため、遺言がないと1円も渡りません。ただし、相続人以外が財産を取得すると相続税額が2割加算される点にご注意ください。生命保険の受取人にする方法もありますが、この場合も非課税枠は使えません。
- Q. ペットが残された場合はどうなりますか?
- 飼育を引き受けてくれる人を生前に決めておくのが確実です。遺言で、飼育を条件に財産を渡す(負担付遺贈)方法や、死後事務委任契約に引き渡しを入れておく方法があります。いずれの場合も、引き受ける人の承諾を得ておいてください。
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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。