遺言書の書き方

公正証書遺言の作り方|費用・必要書類・証人・当日の流れ

公正証書遺言は公証人が関与するため、方式の不備で無効になるおそれがほとんどありません。作成までの手順、必要書類、証人になれない人、手数料の決まり方、出張作成や入院中の対応まで、実務の流れに沿って解説します。

約5分で読めます・2026-09-05 公開

この記事の要点

  • 公正証書遺言は公証人が作成するため、方式の不備で無効になるおそれがほとんどありません。
  • 証人2人が必要です。推定相続人や受遺者、その配偶者・直系血族は証人になれません。
  • 手数料は目的の財産の価額に応じて決まり、全体の財産が1億円以下の場合は遺言加算として11,000円が加わります。
  • 印鑑証明書は発行後3か月以内など期限があるため、必要書類は作成日から逆算して集めます。
  • 病気や入院で公証役場に行けない場合は、公証人に出張してもらえます。手数料は割増になります。

公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言です。原本が公証役場に保管されるため紛失も改ざんもなく、方式の不備で無効になるおそれもほぼありません。家庭裁判所の検認も不要です。

費用と手間はかかりますが、確実性を優先するならこれ以外にない、というのが実務の感覚です。この記事では、作成までの流れを順に見ていきます。

全体の流れ#

  1. 内容を決める — 誰に何を渡すか、遺言執行者を誰にするか
  2. 必要書類を集める — 戸籍、印鑑証明書、登記事項証明書など
  3. 公証役場に相談・依頼する — 電話やメールで予約を取る
  4. 公証人と内容を打ち合わせる — 文案を作ってもらい、修正する
  5. 証人2人を手配する
  6. 作成当日 — 公証役場で読み聞かせ・署名押印
  7. 正本・謄本を受け取る — 原本は公証役場が保管

打ち合わせから作成まで、通常2週間から1か月程度。書類集めを含めると、余裕をみて1〜2か月と考えておくとよいでしょう。

必要書類#

書類用途備考
遺言者の印鑑証明書本人確認発行後3か月以内など期限あり
遺言者と相続人の関係が分かる戸籍謄本相続人の確認続柄が分かるもの
受遺者の住民票相続人以外に遺贈する場合氏名・住所・生年月日の確認
不動産の登記事項証明書財産の特定法務局で取得
固定資産評価証明書手数料の算定市区町村で取得
預貯金・有価証券の資料財産の特定通帳のコピーなど
証人2人の氏名・住所・生年月日・職業のメモ証人の記載本人確認書類が必要な場合あり

必要書類は公証役場や事案によって異なります。事前に確認してください。

証人2人が必要です#

作成には証人2人の立会いが必要で、なれない人が法律で決まっています。

  • 未成年者
  • 推定相続人(相続人になる予定の人)と受遺者、およびその配偶者と直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

つまり、配偶者や子には証人を頼めません。財産を渡す予定の人も同じです。友人や知人に頼む方法もありますが、遺言の内容を知られることになるため、実務では税理士・司法書士・弁護士などの専門家や、公証役場に紹介してもらう方法がよく使われます。

費用のしくみ#

公証人の手数料は、政令で定められています。ポイントは、財産の総額ではなく「渡す相手ごとの財産の価額」で計算して合算するという点です。

  1. 相続人・受遺者それぞれが受け取る財産の価額を出す
  2. その価額ごとに手数料を求める
  3. それらを合計する
  4. 全体の財産が1億円以下の場合は、遺言加算として11,000円を加える

たとえば財産6,000万円を子2人に3,000万円ずつ渡す場合、3,000万円分の手数料を2人分計算して合算し、1億円以下なので遺言加算を足す、という組み立てになります。財産を細かく分けるほど手数料は増える傾向があります。

これに、正本・謄本の交付手数料(枚数に応じた実費)が加わります。おおよその金額は、財産の内容を伝えれば公証役場が事前に見積もってくれます。

当日の流れ#

  1. 公証役場に、遺言者と証人2人が集まる
  2. 公証人が本人確認をする(印鑑証明書と実印)
  3. 遺言者が遺言の趣旨を口授する(事前の打ち合わせどおりで構いません)
  4. 公証人が遺言書を読み聞かせ、または閲覧させる
  5. 遺言者と証人2人が署名・押印する
  6. 公証人が署名・押印する
  7. 正本と謄本を受け取る(原本は公証役場が保管)

当日の所要時間は、30分から1時間程度が目安です。内容は事前に固めてあるので、当日は確認と署名が中心になります。

公証役場に行けない場合#

出張してもらう

入院中や施設に入っている場合、公証人に病院や自宅へ出張してもらえます。この場合、手数料が1.5倍になり、日当と交通費が加わります。

話せない・耳が聞こえない場合

口がきけない方は通訳人の通訳または筆談によって、耳が聞こえない方は通訳人の通訳または閲覧によって、それぞれ作成できます。方法が用意されているので、あきらめる必要はありません。

署名ができない場合

病気などで署名できない場合、公証人がその事由を付記して署名に代えることができます。

作成後にやっておくこと#

  • 正本・謄本の保管場所を決める — 原本は公証役場にあるので、なくしても再発行してもらえます
  • 家族の誰かに「公正証書遺言がある」ことを伝える — 内容まで話す必要はありません
  • エンディングノートに書いておく — 「公正証書遺言あり・○○公証役場・令和○年作成」
  • 遺言執行者に伝えておく — 引き受けてもらえるか、事前に確認しておくとスムーズです

公正証書遺言を作るには、まず財産の全体像が必要です。エンディングノートで書き出した内容が、そのまま打ち合わせ資料になります。

財産を書き出してみる

書き直したくなったら#

公正証書遺言も、何度でも書き直せます。新しい遺言書を作れば、内容が抵触する部分は古いものが撤回されたことになります。

ただし作り直すたびに手数料がかかります。子の結婚、財産の変動、気持ちの変化。想定できる範囲は最初の設計で吸収しておくと、作り直しの回数を減らせます。

よくある質問

Q. 公正証書遺言なら、絶対に無効になりませんか?
方式の不備で無効になることはまずありません。ただし、作成時に遺言能力がなかったと判断されれば無効になり得ます。認知症が進んだ状態では公証人が作成に応じないこともあります。判断能力があるうちの作成が前提です。
Q. 公正証書遺言があれば、遺留分の請求も防げますか?
防げません。遺留分は遺言によっても奪えない権利です。遺留分を侵害する内容の遺言も有効ですが、侵害された相続人から金銭の支払いを請求される可能性があります。設計段階で遺留分を意識しておくことが大切です。
Q. 正本や謄本をなくしてしまいました。
原本が公証役場に保管されているので、再交付を受けられます。相続開始後であれば、相続人などの利害関係人が請求できます。全国どこの公証役場からでも遺言の有無を検索できます。
Q. 費用を抑えたいのですが、自筆証書でも十分でしょうか。
財産が単純で相続人も少なく、揉める要素がないなら、自筆証書+法務局の保管制度でも実用的です。ただし不動産がある、相続人以外に渡す、揉める可能性があるといった場合は、公正証書のほうが結果的に安く済むことが多いです。争いになれば費用は桁違いになります。

「ななえの手帖」でできること

読んだ内容を、そのまま形にできます。登録不要・無料。入力した内容はお使いの端末内にのみ保存され、 外部サーバには送信されません。

この記事を送る

ご家族や、気になっている方に。読んでほしい人に送っておくと、話を切り出しやすくなります。

LINEで送るXに投稿

あわせて読みたい

「遺言書の書き方」の記事をすべて見る解説記事の一覧を見る

一次情報の確認先

この記事に出てくる制度や数値は、次の機関が公表している情報にもとづいています。 制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の内容をご確認ください。

記事に出てくる言葉の意味は用語集にまとめています

登録会員(無料)

会員特典「手帖の道具箱」をお届けします

読んで終わりにせず、手を動かすところまで。無料の登録会員になると、印刷して書き込める4枚をお届けします。

  • もしもの頁 冊子版もしもの時にご家族が行う手続きを、期限順に並べた一冊。連絡先の記入欄つき。
  • 終活の棚卸しシート財産と契約を一年に一度書き出すためのシート。去年からの変化を追えます。
  • 贈与契約書のひな形生前贈与の「言った・言わない」を残さないための契約書。記入して2通作れます。
  • デジタル遺品チェックリストスマホ・アカウント・サブスクの棚卸しと、故人アカウント管理人の設定手順。

あわせて、年に一度「そろそろ手帖の更新を」とお声がけします。 財産も家族の連絡先も制度も一年で変わるので、思い出すきっかけがあるだけで手帖は生き続けます。

このサイトのエンディングノートと相続税の概算計算は、登録なしで無料でお使いいただけます。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。