エンディングノートの書き方

医療・介護の希望の書き方|延命治療・胃ろう・告知と、人生会議(ACP)

回復の見込みがないときの延命治療、胃ろう、余命の告知、臓器提供。判断できなくなったときに家族が代わりに決めることを、先に書き残しておくための記事です。人生会議(ACP)の進め方と、書いたものにどこまで効力があるのかまで解説します。

約5分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 医療の場面で本人の意思が確認できないとき、家族は「本人ならどうしたか」を推し量って決めることになります。書き残しておけば、その負担が大きく減ります。
  • 事前指示書やリビングウィルに法的な強制力はありませんが、医療現場では本人の意思を示す資料として実際に尊重されます。
  • 厚生労働省は、本人・家族・医療者が話し合いを重ねる取り組みをアドバンス・ケア・プランニング(人生会議)として勧めています。一度決めて終わりにせず、繰り返し話すことが前提です。
  • 臓器提供は、本人が意思表示していても家族が拒めば行われません。書き残すだけでなく、家族に伝えておくことが必要です。
  • 介護を「どこで受けたいか」と「誰にお願いしたいか」は、施設の空きや家族の事情で希望どおりにならないこともあります。優先順位をつけて書いておくと家族が判断できます。

医療や介護の場面では、本人が自分で決められない状態になっていることが少なくありません。意識がない、話せない、判断する力が落ちている。そのとき医師が向き合うのは家族です。

「延命治療をどうしますか」と聞かれた家族は、限られた時間で、本人の代わりに答えることになります。何も手がかりがなければ、何を選んでも「これでよかったのか」が残ります。書き残しておくことは、自分の希望を通すためというより、その重荷を家族に丸ごと預けないためのものです。

書いたものに、どこまで効力があるか#

先に、期待しすぎないための前提を書きます。日本には尊厳死を定めた法律がなく、事前指示書やリビングウィルと呼ばれる書面に法的な強制力はありません。「この書面があるから必ずそうなる」というものではありません。

ただし、実務では違います。医療の現場では、本人の意思を示す資料として実際に尊重されます。厚生労働省の指針も、本人の意思決定を基本に据えるよう求めています。家族が「本人はこう書いていました」と示せることの意味は、法的効力の有無とは別に大きいのです。

医療について決めておきたいこと#

① 回復の見込みがないときの延命治療

いちばん聞かれる項目です。人工呼吸器、心肺蘇生、昇圧剤。ここでいう延命治療とは、回復の見込みがない状態で、生命を維持するためだけに行う処置を指します。苦痛を和らげる治療(緩和ケア)とは別のものです。

  • できる限りの治療を希望する
  • 苦痛を和らげる処置だけを希望し、延命のための処置は希望しない
  • 家族と医師の判断に任せる(これも立派な意思表示です)

どれを選んでもかまいません。大切なのは、空欄のままにしないことです。「任せる」と書いてあるだけで、家族は「勝手に決めた」と感じずに済みます。

② 胃ろう・経管栄養

自分で食事がとれなくなったとき、おなかに開けた穴やチューブから栄養を入れる方法です。延命治療とは別に、単独で聞かれることが多い項目です。一度始めると、家族の側から「やめてほしい」とは言い出しにくくなります。だからこそ、本人の考えを先に残しておく意味があります。

③ 余命や病名の告知

重い病気が見つかったとき、本人に伝えてほしいか。伝えてほしい場合、余命まで聞きたいか。家族が「本人には言わないでほしい」と希望して、本人が最後まで知らされないまま、ということが今でもあります。自分がどうしてほしいかを書いておいてください。

④ 臓器提供・献体

項目意思表示の方法知っておきたいこと
臓器提供健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードの意思表示欄、日本臓器移植ネットワークの登録本人が提供を希望していても、家族が拒めば行われません
献体生前に大学の献体登録に申し込む家族の同意が必要。登録していないと受け入れられません

どちらも「書いておく」だけでは足りず、家族に伝えておくことが前提になります。

⑤ かかりつけ医と、飲んでいる薬

地味ですが、実際にいちばん役立つ項目です。救急搬送されたとき、家族が持病と常用薬を答えられるかどうかで、その後の処置が変わります。お薬手帳の保管場所も書いておいてください。

  • 持病の名前と、いつからか
  • かかりつけ医の名前・医療機関名・連絡先
  • 常用薬(お薬手帳の場所を書くだけでも可)
  • アレルギー、過去の大きな手術

介護について決めておきたいこと#

介護は医療より期間が長く、家族の生活そのものに関わります。希望どおりにならないこともあるため、優先順位をつけて書いておくと家族が判断しやすくなります。

どこで過ごしたいか

場所特徴考えておくこと
自宅訪問介護・訪問看護を使いながら住み慣れた家で過ごす同居家族の負担。ひとり暮らしなら支援の体制
サービス付き高齢者向け住宅見守りと生活相談がついた賃貸住宅介護が重くなると住み替えが必要になることがある
介護付き有料老人ホーム施設の職員が介護を行う費用の幅が大きい。入居一時金の有無を確認
特別養護老人ホーム費用が比較的安く、公的な施設原則として要介護3以上。待機期間が長いことがある

誰にお願いしたいか

「長男の嫁に」といった暗黙の期待が、あとで揉める原因になります。特定の人にお願いしたいなら、その人と話したうえで書いてください。逆に「誰にも負担をかけたくないので、施設を使ってほしい」という意思も、はっきり書いておく価値があります。

介護の費用をどの財産から出してよいかも、書いておくと家族が動きやすくなります。ただし、認知症などで判断能力が落ちると本人の口座は凍結され、家族でも引き出せなくなります。この点は認知症による資産凍結への備えで解説しています。

人生会議(ACP)という進め方#

厚生労働省は、本人・家族・医療や介護の担当者が繰り返し話し合う取り組みをアドバンス・ケア・プランニングと呼び、「人生会議」という愛称をつけています。

ポイントは、一度決めて終わりにしないことです。健康なときの考えと、病気が進んだときの考えは変わります。変わっていいものとして、折にふれて話し直す。エンディングノートも同じで、書いた内容はいつでも書き直せます。

  1. 自分で考える — 何を大切にしたいか。痛みがないこと、家にいること、迷惑をかけないこと
  2. 信頼できる人を決める — 自分が決められなくなったとき、代わりに話してもらう人
  3. その人と話す — 書いた内容を見せながら。全部でなくてよい
  4. 医療や介護の担当者にも伝える — かかりつけ医、ケアマネジャー
  5. 折にふれて見直す — 入院、退院、家族構成の変化があったとき

「ななえの手帖」には、延命治療・胃ろう・告知・臓器提供・介護の希望を選ぶだけで記録できる欄があります。決められない項目は空欄のままでかまいません。

医療・介護の希望を書き残す

まとめ#

  • 書面に法的な強制力はないが、医療の現場では実際に尊重される
  • 延命治療・胃ろう・告知は、空欄にせず「任せる」でもよいので意思を残す
  • 臓器提供と献体は、書くだけでなく家族に伝えておく
  • 介護は優先順位をつけて書く。誰にお願いしたいかは、その人と話してから
  • 一度で決めきらず、人生会議として折にふれて話し直す

よくある質問

Q. 延命治療を希望しないと書いたら、治療を受けられなくなりませんか?
そうはなりません。ここでいう延命治療は、回復の見込みがない状態で生命の維持だけを目的に行う処置を指します。痛みや苦しさを和らげる治療(緩和ケア)や、回復が見込める治療は別に行われます。心配であれば「苦痛を和らげる処置は希望する」と書き添えておいてください。
Q. 書いた希望は、あとで変えられますか?
いつでも変えられます。むしろ変わるのが自然です。健康なときの考えと、実際に病気になってからの考えは違うことが多いためです。日付を入れて書き直し、家族にも「考えが変わった」と伝えてください。
Q. 尊厳死宣言公正証書というものを聞きました。エンディングノートとどう違いますか?
公証役場で公証人に作成してもらう書面で、本人の意思が公的な形で記録される点が違います。ただし、これにも法的な強制力があるわけではなく、医療現場での扱いはエンディングノートに書いたものと本質的には変わりません。より確実な形で残しておきたい場合の選択肢とお考えください。
Q. 家族が「延命してほしい」と言った場合、どちらが優先されますか?
最終的には、医師が本人の意思を推定しながら家族と話し合って決めることになります。本人の記録があれば、それが判断の中心になりますが、家族の意向とぶつかった場合に必ず記録が優先されるとは限りません。だからこそ、書くだけでなく、生前に家族と話しておくことが重要になります。

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  • 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い

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※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。