エンディングノートの書き方

親にエンディングノートを書いてもらうには|切り出し方と、進まないときの対処

親に終活の話を切り出すのは気が重いものです。嫌がられる理由、話を持ち出すきっかけの作り方、財産の話から入ってはいけない理由、一緒に書き進める順番、そして断られたときの引き際まで、子の立場からまとめました。

約5分で読めます・2026-09-06 公開

この記事の要点

  • 親が嫌がるのは、死を意識させられることと、財産を狙われていると感じることの2つです。この2つを避けて切り出します。
  • 財産の話から入らないでください。連絡先、かかりつけ医、加入している保険といった、いま役に立つ情報から始めます。
  • きっかけは自分ではなく外に置きます。相続登記の義務化や、知人の相続で困った話をニュースとして持ち出すと角が立ちません。
  • 1回で決めようとせず、話題にできただけで十分と考えます。2回目、3回目のほうが進みます。
  • 判断能力が低下すると、遺言も贈与も家族信託もできなくなります。元気なうちにしか始められない備えがあることが、急ぐ理由です。

「親にエンディングノートを書いてほしいけれど、どう言えばいいか分からない」。この相談はとても多く、そして切り出し方を間違えると、かえって話ができなくなります。

この記事は、子の立場から書いています。ご自身が書く場合はエンディングノートの書き方をご覧ください。

なぜ嫌がられるのか#

理由はだいたい2つに絞られます。ここを外さなければ、話は進みます。

嫌がる理由親の受け取り方避け方
死を意識させられる「もう死ぬと思われている」入院や介護など、生きている間に必要になることを理由にする
財産を狙われていると感じる「金の話か」財産の話から入らない。連絡先や医療の希望から始める

切り出し方|きっかけを外に置く#

「お父さん、そろそろ終活を」と正面から言うと、話が重くなります。自分の意思ではなく、外の出来事をきっかけにすると角が立ちません。

  • 制度の変更 — 「相続登記が2024年から義務になったんだって。うちの土地、名義どうなってる?」
  • 知人の話 — 「友達のところ、お父さんが急に入院して保険が分からなくて大変だったらしい」
  • 自分のこと — 「私も書いてみたんだけど、意外と書けなくて。お父さんならどう書く?」
  • 手続きの場面 — 入院、施設の見学、通帳の記帳に付き添ったとき

4つ目が特に効きます。実際に困っている場面なら、話が自然につながります。「保険証券ってどこにあるの?」の一言から始まることは珍しくありません。

進める順番#

書いてもらう順番には、はっきりした正解があります。いま役に立つものからです。

  1. 連絡先 — 親戚、友人、かかりつけ医。「入院したとき誰に連絡すればいい?」
  2. 医療・介護の希望 — 延命治療、どこで介護を受けたいか。判断を迫られる場面で必要になります
  3. 保険と年金 — 加入している保険会社。請求できるのに知らないまま、が最も多い
  4. 契約とサブスク — 携帯、公共料金、定期購入。解約先が分からないと引き落としが続きます
  5. 財産のありか — 口座のある金融機関、不動産。金額は聞かなくてよい
  6. 遺言と分け方の希望 — ここまで来られたら十分です

1〜4は、親が生きている間に家族が使う情報です。「もしものため」ではなく「入院したときのため」と言えるので、話しやすい。5と6は、ここまでの信頼ができてからで間に合います。

一緒に書く#

「書いておいて」とノートを渡すだけでは、まず書かれません。その場で一緒に埋めるほうが確実です。

  • 聞き取って代筆する — 字を書くのが負担な場合、話してもらって子が書く。最後に本人に確認してもらう
  • 1回30分まで — 長いと疲れて、次が嫌になります
  • 1回1項目 — 「今日は連絡先だけ」と決める
  • 空欄を許す — 「決まってないなら空けておこう」。埋めさせようとしないこと

断られたとき#

「まだ早い」「縁起でもない」と言われたら、その日は引いてください。押すと、次の機会がなくなります。

目標は、その日に書いてもらうことではありません。話題にできたという事実を作ることです。一度出た話は、親のなかにも残ります。数か月後に「この前の、書いてみたよ」と言われることは実際にあります。

  • 引き際を決めておく — 嫌がる素振りが出たら、その場で話題を変える
  • ノートだけ置いていく — 「よかったら」と渡して、催促しない
  • 自分の分を先に書く — 子が書いて見せると、警戒が下がります
  • 第三者から — 親が信頼している人(かかりつけ医、税理士、地域包括支援センター)からの一言が効くことがあります

なぜ急いだほうがよいのか#

「まだ元気だから」は、実は先送りの理由になりません。認知症などで判断能力が低下すると、備える手段そのものが使えなくなるからです。

できなくなること判断能力が低下した後
預金の引き出し凍結されます。家族でも動かせません
自宅の売却成年後見の申立てと家庭裁判所の許可が必要
遺言書の作成無効とされる可能性が高くなります
生前贈与後見では原則できません
家族信託の契約契約できません

詳しくは認知症による資産凍結への備えにまとめています。「まだ早い」と感じる時期が、実はちょうどよいタイミングです。

「ななえの手帖」は登録不要・無料で、選ぶだけで書き進められます。まず子が自分の分を書いて、その画面を見せながら話を始める使い方もできます。

まず自分の分を書いてみる

まとめ#

  • 嫌がられる理由は「死を意識させられる」と「財産を狙われている」の2つ
  • きっかけは外に置く。制度の変更、知人の話、入院などの場面
  • 順番は、連絡先 → 医療 → 保険 → 契約 → 財産 → 遺言
  • 1回30分、1回1項目。空欄を許す。きょうだいには必ず共有
  • 断られたら引く。目標はその日の完成ではなく、話題にできること

よくある質問

Q. 親が「お前には関係ない」と言います。
その場は引いてください。関係がないわけではないことは、実際に手続きが始まれば分かります。今できるのは、緊急連絡先とかかりつけ医だけでも聞いておくことです。「財産の話ではなく、入院したときに困るから」と目的を限定すると、答えてもらえることがあります。
Q. きょうだいの1人が反対しています。
反対の理由を聞いてください。「親を不安にさせる」という心配なのか、「特定の1人が親を囲い込んでいる」という不信なのかで対応が変わります。後者であれば、進め方を全員に共有し、決めごとは全員が同席する場で行う形にしてください。
Q. 親がすでに物忘れが増えています。もう遅いですか?
程度によります。日常会話ができ、契約の意味を理解できる状態であれば、遺言や家族信託がまだ可能なこともあります。ただし判断は専門家が個別に行うため、早めに医師や司法書士、税理士に相談してください。時間が経つほど選択肢は減ります。
Q. 財産の額は聞いておくべきですか?
無理に聞く必要はありません。必要なのは金額ではなく「どこにあるか」です。金融機関名と、保険会社名が分かれば、家族は手続きを進められます。相続税がかかるかどうかの見当をつけたい場合は、ご本人に概算だけ確認してもらう形でも足ります。

「ななえの手帖」でできること

読んだ内容を、そのまま形にできます。登録不要・無料。入力した内容はお使いの端末内にのみ保存され、 外部サーバには送信されません。

この記事を送る

ご家族や、気になっている方に。読んでほしい人に送っておくと、話を切り出しやすくなります。

LINEで送るXに投稿

あわせて読みたい

「エンディングノートの書き方」の記事をすべて見る解説記事の一覧を見る

一次情報の確認先

この記事に出てくる制度や数値は、次の機関が公表している情報にもとづいています。 制度は改正されることがあるため、実際の手続きの前に最新の内容をご確認ください。

  • 法務省相続・遺言・登記の制度
  • 国税庁相続税・贈与税・所得税の取扱い

記事に出てくる言葉の意味は用語集にまとめています

登録会員(無料)

会員特典「手帖の道具箱」をお届けします

読んで終わりにせず、手を動かすところまで。無料の登録会員になると、印刷して書き込める4枚をお届けします。

  • もしもの頁 冊子版もしもの時にご家族が行う手続きを、期限順に並べた一冊。連絡先の記入欄つき。
  • 終活の棚卸しシート財産と契約を一年に一度書き出すためのシート。去年からの変化を追えます。
  • 贈与契約書のひな形生前贈与の「言った・言わない」を残さないための契約書。記入して2通作れます。
  • デジタル遺品チェックリストスマホ・アカウント・サブスクの棚卸しと、故人アカウント管理人の設定手順。

あわせて、年に一度「そろそろ手帖の更新を」とお声がけします。 財産も家族の連絡先も制度も一年で変わるので、思い出すきっかけがあるだけで手帖は生き続けます。

このサイトのエンディングノートと相続税の概算計算は、登録なしで無料でお使いいただけます。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の税務・法務に関する助言ではありません。 制度は改正されることがあります。実際のご判断にあたっては、国税庁の最新情報をご確認いただくか、 税理士等の専門家にご相談ください。